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2020.09.29

【レビュー】原美術館最後の企画展 光ー呼吸 時をすくう5人

原美術館最後の企画展 光ー呼吸 時をすくう5人

今回は美術展のレビューとなります。今回足を運んだ展覧会はこちら

原美術館で行われている「光―呼吸 時をすくう5人」です

2020年9月19日[土]-2021年1月11日[月・祝]まで開催されています。

「光ー呼吸 時をすくう5人」では、原美術館での時間を記録ではなく、皆様の記憶に留めていただけたらという原美術館側の願いが形になった美術展。先行きが不透明な中でも静かに自身の立ち位置から社会を省察し、見る人の心に深く語りかける5名の作家の作品が紹介されています

料金は一般 ¥1,100 / 大高生 ¥700 / 小中生 ¥500 で事前予約が必須となっております。

この展覧会を一言で言うと

「ここまで感慨深い美術展がこれまであったか?」というような内容でした。

早速レビューに!と言いたいところですがその前にこの美術館のことについて少しお伝えしたいことがあります

もうご存知な方も多いことと思います。実はこの美術館2021年1月に閉館してしまうんです。「光ー呼吸 時をすくう5人」は原美術館での最後の美術展となります。

 

個人的に一番好きな美術館の一つがこの原美術館でした。

原美術館入り口

というのも都会のど真ん中、品川にあるのにものすごくゆっくりとした時間が流れる美術館。しかもそこでは第一線の現代美術を見ることができる場所でした。他の美術館にはない心地よさの中で美術を見ることができます。

数多くの企画展を行ってきた美術館ですが現在第一線で活躍している作家(森村泰昌、宮島達男、奈良美智など)の常設展示があるのも大きな魅力です。

原美術館は、40年にわたって日本の現代美術シーンを牽引してきました。日本では80年代以降は現代美術のマーケットが加熱していったといわれていますが、原美術館はその先駆けの存在として79年に誕生した現代美術を扱う美術館です。

 

 

展覧会レビュー

その閉館最後の企画展がこの光―呼吸 時をすくう5人です

原美術館での時間を記録ではなく、記憶に留めて欲しいという願いが込められた最後を語るにふさわしい企画になっております。光や時間、空間に焦点をあて作者が作品の中にそれをどう表現したかを見られる美術展です。

作品を見れば見るほど原美術館の存在に目を向けるようになる作品に溢れていました。

本展には、今井智己の原美術館を撮影した作品

城戸保の時間の経過を感じる写真の作品

佐藤時啓の光のドローイングのような作品

佐藤雅晴のアニメーションと

リー・キットのインスタレーションの作品を見ることができます。

今井智己 「Semicircle Law #42 2018.9.11 / 33km」2020年

 

城戸保 「光と蜜柑」 2019 年
佐藤時啓 「光-呼吸」 2020年
佐藤雅晴 「東京尾行」2015-2016年
リー・キット 「Flowers」2018 年

意識されることのない時間、見過ごしてしまうような光景に視点を当てて、きっと展覧会を見た方は「今」をより鮮明なものに感じられる事と思います。

私はこの展覧会で見たものは、一つの作品そして原美術館が刻んできた時間なのかな…

といったように見てしまいました。

個人的な一番の見どころは木戸保さんの作品が展示されていた一階の展示空間です。

一階展示室の様子

壁の至る所にに大中小の写真が展示されていて廃れたものや、実った果物、咲き誇った花の作品にセピアのような加工が施された写真の作品には過ぎていく時間の美しさや儚さがあるように感じました。その展示室にはピアノのメロディが流れていて過去を回想し、そして今、これからの流れていく時間にも目を向けてくれるような空間でした。

現代美術を牽引したきたという歴史も感じることのできる美術展だったので非常に感慨深かったです。現代の時間軸に発信する芸術、その姿勢を変わることなく貫いた美術館の集大成と言えるのもがここにはありました。この展覧会は必見です。

 

展覧会の様子

この美術館に行くと毎回思いますが知り合いの家に招かれたみたいな居心地の良さの中で鑑賞することができます。行くというよりお邪魔するみたいな感覚。しかし残念ながら場内は写真撮影禁止です。

私が足を運んだときは展示室が人でいっぱいになることははないけど人のいない空間はないという感じで、一つの室内に少なくて2、3名、多くて10名くらいの方はいました。事前予約が必要なので一回に会場に入れる人数が決目られていますし、定員を設けている部屋もあります。展示室は窓が開いているので換気もしながら展示が行われていました。

鑑賞時間はゆっくり見て1時間くらいです。

この美術館は中庭を望むカフェが本当に居心地が良いので美術展を見終えたら必ずいって頂きたいと思います。個人的にはここも含めて原美術館での鑑賞だと思っております。

原美術館内にあるカフェ

そんな素敵な空間に溢れた原美術館ですが今年の一月には終わってしまいます。閉館してしまう前にぜひ行っていただければと思います。

 

最後に美術館は閉館となりますが原美術館の活動は続いていきます。

実はこの原美術館、東京だけではなく群馬にも美術館を構えてます。

それが「ハラ ミュージアム アーク(2021年から原美術館ARCに改名)です。

ハラミュージアムアーク(2021年から原美術館ARCに改名)

これから原美術館の拠点は群馬となり、原美術館にある常設もこのアークに移転になることが決まっているようです。きっとこの閉館を機により一層現代美術を発信していく場所として活躍して頂けることと思います。