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2022.02.04

知っておきたいイタリアを代表する30人の芸術家

知っておきたいイタリアを代表する30人の芸術家

今回は「知っておきたいイタリアを代表する30人の芸術家」をお届けいたします。

イタリアといえばルネサンスの三大巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロを有する芸術大国です。現代まで多くの偉大な芸術家を輩出した国として知られています。

本記事では芸術の歴史の中でも特に後世に影響を与えたと考えられるイタリアの30名の芸術家(主に画家)を、年代順に紹介してまいります。

1 ジョット・ディ・ボンドーネ

生没/1266-1337
イタリアのルネサンス芸術家の最初の一人。一般的に単にジョット(ジオット)と呼ばれることが多い。ジョットはそれまで西洋絵画には見ることができなかった現実的な空間表現や人物の自然な感情表現をもたらした。当時の描写法では革新的なもので、この点からジョットは「西洋絵画の父」ともいわれている。

「オグニッサンティの聖母」1310頃

「ユダの接吻」 1304-1306

2 フィリッポ・リッピ

生没/1406-1469
ボッティチェリの師として知られる初期ルネサンスを代表するフィレンツェ派の巨匠。細かな風景の写実表現、ドラマチックな構図、豊かな人物の表情などを描写し繊細かつ崇高な宗教画を生み出した。隆盛してゆくフィレンツェ派の発展において極めて重要な役割を果たした。

「東方三博士の礼拝」 1430

「聖母戴冠 」1447

3 サンドロ・ボッティチェッリ

生没/1445-1510
初期ルネサンスで最も業績を残したフィレンツェ派の代表的な画家。当時大富豪だったメディチ家の保護を受け、宗教画、神話画などの傑作を残した。19世紀末までほとんど忘れられた存在になっていたが、19世紀イギリスのラファエル前派に注目されたことから再び脚光を浴びた。

【代表作】

「春」 1478-1482

「ヴィーナスの誕生」1485

4 ドメニコ・ギルランダイオ

生没/1449-1494

フィレンツェ生まれのルネサンス期の画家。自身の工房からミケランジェロをはじめとする多くの有名な画家たちを輩出したことでも知られている。宗教的なテーマを現代的(15世紀)に描き大きな人気を博した。

【代表作】

「使徒の改宗」1481-1482

「エリザベト訪問(トルナブオーニ礼拝堂)」1486-1490

5 レオナルド・ダ・ヴィンチ

生没/1452-1519
美術史上最も優れた芸術家。イタリア・ルネサンス期の三大芸術家の一人。「万物の天才」と言われ、絵画だけでなく、音楽、建築、設計、工学、解剖学、地質学、天文学とさまざまな学問に多大な影響を及ぼした。絵画上で光とその風景や物体への影響を、これまでにないほど劇的な効果をもって描くことができることを示した。

「モナ・リザ」1503-1519

「最後の晩餐」 1495

6 ヴィットーレ・カルパッチョ

生没/1465-1526

15世紀末から16世紀初頭にかけ活躍した初期ヴェネツィア派を代表する画家。柔らかな光の描写や鮮やかな色彩を駆使し、独自のスタイルを確立した。主に宗教画やヴェネチアの日常生活を描いたが、中でも風景画が高く評価されている。

最後の晩餐 1495

「受胎告知」1504

7 ミケランジェロ・ブオナローティ

生没/1475-1564

イタリアを代表する芸術家でイタリア・ルネサンス期の三大芸術家の一人。画家、彫刻家、建築家として後世に多大な影響を与えた。「ダビデ像」や「アダムの創造」、「最後の審判」などが代表作。今も昔もミケランジェロの作品は「神のごとき」と称されている。

「ダビデ像」1501-1504

「アダムの創造」1508-1512

8 ラファエロ・サンティ

生没/1483-1520
イタリア・ルネサンス期の三大芸術家の一人で、3人の中でもっとも遅く生まれ最も若くしてこの世を去った。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロに影響を受け、写実的な明暗法、肉付法を基礎としつつ,理想美を追求して古典主義芸術を完成させた。ルネサンスの絵画理念を最も純粋に表現した芸術家として後世に大きな影響を及ぼした。

「三美神 」1504-05

「アテナイの学堂」 1509-1510

9 ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

生没/1488-1576

盛期ルネサンスはダ・ヴィンチらのフィレンツェ派と、ヴェネチア派に二分される。そのヴェネチア派で最大の巨匠とされるのがティッツァーノである。画業だけで言えばルネサンスの三大巨匠に並ぶと称される。権力者から庇護を受け、ヴェネチア共和国の公認画家として生前より大きな成功を収めた。ヴェネチア派最大の特徴である色彩の魅力を駆使して描かれた彼の作品は「色彩の錬金術」と評された。

「聖愛と俗愛」1514

「ウルビーノのヴィーナス 」1538

10 アーニョロ・ブロンズィーノ

生没/1503-1572

マニエリスム(16世紀中頃から末にかけて見られる後期イタリア・ルネサンスの美術様式)の中で最も偉大で最も洗練された画家の一人。優雅で人工的な画風の追求に人生を捧げた。当時大富豪として力があったコジモ・デ・メディチに庇護を受け、肖像画も数多く手がけた。

「羊飼いの礼拝」1540

「愛と勝利の寓話」1542

11 ジョルジョ・ヴァザーリ

生没/1511-1574

ルネサンスを作った画家、建築家、美術史家。現存するルネサンスの芸術家に関する情報のほとんどは、ヴァザーリの著書「芸術家列伝」によるもので、これは彼ののこした最も大きな功績と言われている。しかし美術史家としてだけでなく生前から芸術家としても高く評価された。

「ペルセウスとアンドロメダ」1572

「ゲッセマネの祈り」1570

12 カラヴァッジオ

生没/1571-1610

本名ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ。イタリアを代表するバロック期の最大の巨匠。ルネサンスから移行したマニエリスム(後期イタリア・ルネサンスの美術様式)様式を否定し、徹底した写実性と劇的な明暗対比、感情表現でその後の芸術に多大な影響を及ぼした。生前から高い評価を得たが、粗野で素行が悪い一面があり、38歳という若さで生涯を終えた。

「キリストの埋葬」1603

「洗礼者聖ヨハネの斬首」1608

13 カナール(ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール)

生没/1697-1768

カナレット、ヴェネツィア共和国の景観画家であり版画家。中でも都市の景観画を得意とした。父親であるベルナルド・カナールも画家であったことから区別するために「小カナル」=カナレットと呼ばれる。カナレットは写真のような絵を数多く残し、当時の生活を伝える重要な作品を残した。

「キリスト昇天祭の日の御座舟の帰還」1737

「サン・ピエトロの宵祭り」1755

14 ジョヴァンニ・セガンティーニ

生没/1858-1899

19世紀のイタリア、スイスを代表する画家。初期の明暗法を用いた作品は当時の批評家の注目を集め「イタリアのミレー」とも評された。セガンティーニが主に描いたのはアルプスの風景やそこで暮らす人々で、イタリアでは印象派の表現をいち早く取り入れた人物として知られている。

「アルプスの真昼」1891

「悪しき母たち」1897

15 ジャコモ・バッラ

生没/1871-1958

20世紀初頭にイタリアで栄えた「未来派」を率いた中心人物。未来派とは戦争と機械文明がもたらすダイナミズムやスピードを礼賛したイタリア発の芸術運動である。未来派は戦争や暴力などと密接に関わった右翼的な芸術運動だったが、バッラは暴力と距離をおき、既知に富む作品を多く生み出した。

「街灯-光の研究」1909

「鎖に繋がれた犬のダイナミズム」1912

16 カルロ・カッラ

生没/1881-1966
「未来派」の第一人者として挙げられる人物。美術雑誌『ラチェルバ』や『ラ・ボーチェ』などを通じて未来主義の理論的支柱として活躍した。しかし未来派の活動は短命に終わり、未来派の終わりと共にカッラの表現も前衛からアカデミックな表現へと変化した。

「バルコニーの女」1912

「形而上のミューズ」1917

17 ウンベルト・ボッチョーニ

生没/1882 – 1916

マルクス主義者のアナキストであり、未来派の主要メンバーでもあった。ボッチョーニは立体表現に関心を持ち、彫刻で重要な作品を制作した。代表作として広く知られているのが「空間における連続性の唯一の形態」である。「未来派」のメンバで最も認知されている人物。

「都市の成長」1911

「空間における連続性の唯一の形態」 1913年

18 ジーノ・セヴェリーニ

生没/1883-1966

未来派運動の中心的メンバーのひとり。「未来派」の運動は当時(20世紀初頭)のパリで隆盛した芸術の影響を受けたと言われているが、セヴェリーニはフランスの同時代の動向をイタリアに橋渡しするという重要な役割を担った。未来派の中でもいち早くキュビスムを取り入れたことで知られている。

「青い踊り子」1912

「海=ダンサー」1914

19 アメデオ・モディリアーニ

生没/1884-1920

20世紀を代表するエコール・ド・パリの画家。20世紀各地で発生した前衛芸術とは一線を画し、極めて個性的で独創的な画風を生み出した。その根幹にはアフリカ文化などのプリミティブ・アートがあると言われる。生存中はそれほど作品は売れなかったが、画家として、彫刻家として並外れた才能を見せ、伝統的な美的価値観と現代精神を統合することに成功した。

「赤いショールとジャンヌ・エビュテルヌ」1917

「赤い裸婦」1917

20 ジョルジョ・デ・キリコ

生没/1888-1978

第一次世界大戦以前にイタリアで発生した「形而上絵画」の創始者。彼の作風は後のシュルレアリスムの先駆けともなった。形而上絵画では「論理や常識では把握できない、夢に登場するような世界の絵画化」を目指した。ダリやマグリットなどに多大な影響を及ぼしたと言われている。

「ヘクトルとアンドロマケ」1912

「不安を与えるミューズたち」1916-1918

21 ルーチョ・フォンタナ

生没/1899-1968
アルゼンチン生まれのイタリア人画家。イタリアにおいて最も影響力のある近代のアーティストと言われている。既存の絵画や彫刻を超えた新時代に見合う芸術を求め、実験的な作品を数多く生み出した。代表作はキャンバスをナイフで切り裂き、空間とは何かを考察した「空間概念」のシリーズ。

「空間概念・待機」1960

「空間概念」1964

22 ファウスト・メロッティ

生没/1901-1986

今世紀のイタリア美術における先駆的な存在として絶大な評価を得た彫刻家。インテリア・デザイナー、陶芸家としての顔も持つ。音楽の理論を応用した、響きを視覚的に伝える抽象的な作品を数多く制作した。フォンタナと親交が深く、互いに大きな影響を与えあった。

「il carro dei rabdomanti」1959

「notte africana」 1973

23 ブルーノ・ムナーリ

生没/1907-1998

ブルーノ・ムナーリは多くの分野で活躍したイタリアを代表するアーティスト。美術家、デザイナー、教育者、絵本作家といったさまざまな顔を持っている。一時的に「未来派」の活動にも参加した。日本にゆかりの深い人物であり、日本の伝統的な美意識やデザインに影響を受けたとされている。

「役に立たない機械」1947

「無題」1951

24 アフロ・バサルデラ

生没/1912-1976

アフロはアメリカの抽象表現主義の影響を受けながら、キュビスムやシュルレアリスムを発展させたような独自の作風で世界的に評価されたイタリアのアーティスト。1956年のヴェネチア・ビエンナーレでベストイタリアアーティストを受賞した経歴を持つ。

「Untitled」1957

「コンポジション」1968

25 アルベルト・ブッリ

生没/1915-1995

ブッリ20世紀を代表するイタリアの画家、彫刻家。フォンタナと並び、第2次大戦後のイタリアの前衛美術を牽引した、アンフォルメルを代表するアーティストである。イタリアの美術が戦後ヨーロッパを支配したアンフォルメルの影響から脱する原動力となったのはブッリの功績が非常に大きいとされている。

「Red Plastic」1961

「Bianco cretto」1975

26 エンリコ・カステラーニ

生没/1930-2017

20世紀の美術界で国際的な評価を受けたイタリアの芸術家。カンヴァス表裏に釘を打ち込み、「光の絵画」を制作したことで広く知られている。後述するピエノ・マンゾーニとともに前衛美術誌を創刊し、イタリアの現代美術の認知に大きな役割を果たした。

 

「Superficie Bianca」1967

「Superficie Argento」1973

27 ミケランジェロ・ピストレット

生没/1933-

20世紀イタリアを代表する画家、芸術理論家。1960年代末から70年代初頭にかけてイタリアで興った「日常的な素材をアートに変容させる」前衛運動、アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)の中心的作家であり、現在までイタリアの現代美術を牽引する。鏡のように磨かれた金属板に人物などを描いた「ミラー絵画」シリーズが世界的に有名。

「Standing Man(Mirror Painting)」1962

「ぼろぎれのヴィーナス」1967

28 ピエロ・マンゾーニ

生没/1933-1963

20世紀のイタリアの美術家、画家、彫刻家。マルセル・デュシャンの影響を受け、ヨーロッパ、イタリアにおけるコンセプチュアル・アートの草分け的な作品も多く製作した。アイロニックな作品が多く、概念的アートの作品が世界的に高く評価を得ている。

「アクローム」(無色)1959

「Artist’s Shit」1961

29 ジョヴァンニ・アンセルモ

Giovanni ANSELMO
生没/1934年-

1960年代後期の重要な美術運動「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)」を代表する作家。第44回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1990)金獅子賞を受賞したことでも知られている。作品を通して鑑賞者に問いを投げかけるような詩的な作風が特徴。

「Oltremare a Ovest」1980

「Oltramare」1984

 

30 エンツォ・クッキ

生没/1950-

80年代以降、ニューペインティングとして世界的に脚光を浴びた画家の一人。クッキは具象的なモチーフを神話的、物語的に扱い、前時代で失われた色彩性と豊かなイメージを作品に復権させようと試みた。ドラマチックな物語性は、独特の詩的な表現がクッキの作品の特徴。

「Oltramare」1984

「Sotto Lingua」2000

まとめ

以上が「知っておきたいイタリアを代表する30人の芸術家」です。

イタリアの美術といえば、イタリア・ルネサンスの三大巨匠「レオナルド・ダ・ヴィンチ」「ミケランジェロ」「ラファエロ」が真っ先に浮かんでくるかと思います。それほどまでにこの三大巨匠が後世に与えた影響は計り知れないものがありました。しかし、反対にあまりにもその影響が大きかったからこそイタリアの芸術はバロック以降は大きな発展を見ることがありませんでした。
しかし近代になるとイタリアでも自国ならではの美術を生み出すための大きな動きが現れてきます。それが「未来派」をはじめとした前衛芸術運動です。以降イタリアでは近現代アートが非常に盛んになり、現在では世界一有名な芸術の祭典「ヴェネチア・ビエンナーレ」が行われる国となりました。

そのため本記事ではバロック以前と近現代のアーティストを中心に紹介させていただいております。今回の記事がルネサンス三大巨匠以外にも偉大な芸術家たちがいたんだということを再確認できる記事になれば幸いです。

 

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