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2025.11.17

【知っておきたい】評価上昇中の芸術家Best10

日本人は世界的に見てもかなりのアート好きと言われます。

中でもダ・ヴィンチやゴッホ、ピカソ、印象派など、すでに不動の人気を誇り、彼らを特集する企画展は常に満員となるのが通例です。

しかし国内で開催された展覧会を振り返ると、10年前にはあまりよく知られていなかった画家の個展に多くの来場者が押し寄せている、ということも珍しくはありません。

これは時代の流れと共に、芸術に関する研究が進んだり、また消費者たる人々の認識が改まったりすることで、それまで注目されていなかった芸術家の再評価されていった結果です。

ここでは、近年特に評価が高まっている芸術家を、独自の判断でベスト10にまとめました。

今後美術館などで作品を見る際に参照いただければ幸いです。

10)ハンス・ハルトゥング Hans Hartung / 1904–1989 / ドイツフランス**

Photo by Paolo Monti / BEIC, licensed under CC BY-SA 4.0

■ プロフィール
ハルトゥングは、抽象表現で知られる画家で、力強い線とリズミカルなタッチが印象的です。筆や刷毛だけでなく、道具を工夫して、引っかいたり叩いたりと、さまざまな方法で画面を作りあげました。作品はシンプルな構成ながら、見る人の心を揺さぶるエネルギーがあります。

■ 評価上昇の理由
ハルトゥングは、近年の抽象再評価の流れのなかで再び光が当てられています。デジタルやAI時代においても、彼の線のパワーや、即興性の高い手法が新鮮に感じられ、幅広い層から注目されています。展覧会や出版も増え、静かに人気を高めている存在です。

・デジタル・AIの発展と共に再文脈化が進んだ
・市場価値の回復
・出版・展覧会が増加

■ 代表作
・《T1982-E15(1982)/ハンス・ハルトゥング財団
・《T1962-L7(1962)/同

9)鈴木其一(すずき きいつ) Suzuki Kiitsu / 1796–1858 / 日本

朝顔図屏風(メトロポリタン美術館)

■ プロフィール
鈴木其一は、江戸時代後期の画家で、光琳・抱一の流れをくむ「琳派」を代表する存在のひとりです。花・鳥・風景を、シンプルでありながら洗練された構成で描くスタイルが特徴で、鮮やかな色使いや柔らかい線が魅力です。日本的な自然表現を、モダンにまとめたような作品は、今見ても新鮮に映ります。

■ 評価上昇の理由
其一が再評価されている背景には、近年の琳派人気があります。彼の作品は、構図や色彩がすっきりしており、海外でも注目されています。シンプルでありながら洗練されたデザイン性が、現代の感性と相性がよいのもポイントです。自然を優しく描きつつ、どこか都会的なセンスも感じさせる点が魅力です。

・琳派研究の深化
・海外展示で評価が進む
・図像性の現代性が評価

■ 代表作
・《夏秋渓流図屏風》(1840)/サントリー美術館
・《朝顔図屏風》(制作年不詳)/メトロポリタン美術館

8)マルハ・マジョ Maruja Mallo / 1902–1995 / スペイン

■ プロフィール
マジョはスペイン出身の女性アーティストで、20世紀前半に活躍しました。シュルレアリスム(超現実主義)の影響を受けつつ、リズミカルな形や大胆な色づかいを取り入れたユニークな作品が特徴です。風景や人物、祭りの様子など、社会のエネルギーを生き生きと描いた作品が多く、どこか楽しげな雰囲気が漂います。

■ 評価上昇の理由
マジョが見直されている大きな理由は、女性アーティストが注目される流れのなかで、彼女の多彩な表現が改めて評価されるようになったことが大きいと言えます。その生涯には亡命などの困難もありましたが、作品には常に活気があり、現代の視点から見ると新鮮さが際立っていたというわけです。研究が進むことで、美術史の中でのマジョ位置づけはさらに変化していくことでしょう。

・女性作家再評価の波
・亡命・抑圧という物語性
・出版・展示が増加

ロサンゼルスの映画館に描かれたマルハ・マジョの壁画(1945年)

■ 代表作
・《La Verbena(1927)Museo Reina Sofía
・《Canto de las espigas(1929)

7)ドメニコ・フェッティ Domenico Fetti / 1589–1623 / イタリア

「瞑想」1618年、アカデミア美術館 (ヴェネツィア) Accademia – La Meditazione by Domenico Fetti 1618

■ プロフィール
ドメニコ・フェッティは、イタリア・バロック期に活躍した画家で、物語性のある寓意画(象徴的な表現を含む絵)を得意としました。イタリア出身ということもあり、まさにカラヴァッジオの後継者と呼ぶに相応しい存在だったと言えるでしょう。宗教画だけでなく、日常生活を描いた作品でも、物語が感じられる点が魅力です。

■ 評価上昇の理由
フェッティは長らく評価がまとまっていたものの、近年の研究によって、その表現力の高さが再び注目を集めるようになりました。単なる宗教画にとどまらず、人の感情や内面に迫るような描写があり、今見ると「映画のワンシーンみたい」と感じるほどです。歴史的な背景が見えてくる作品は、時代を超えて響く魅力があり、静かに人気が高まっています。

・寓意画研究の再燃
・バロック研究の深化
・美術館収蔵が豊富比較しやすい

■ 代表作
・《瞑想》(1618)/ヴェネツィア美術館
・《動物の入った布の夢を見るペテロ(1619)/ウィーン美術史美術館

6)ヒラリー・ペシス Hilary Pecis / 1979– / アメリカ

 

■ プロフィール
ヒラリー・ペシスは、身の回りのものや部屋の風景など、いわゆる「日常」をテーマに描く現代アーティストです。鮮やかな色づかいが特徴で、テーブルに置かれた雑誌や花、部屋の棚にある本など、ごく普通のアイテムをポップで親しみやすい表現へと変えてしまいます。一見身近なモチーフですが、どこかリズムがあり、彼女独自の世界観が漂います。

■ 評価上昇の理由
ペシスが注目されている理由は、「何でもない風景」に新しい魅力を与える感性にあります。SNSで人気が高まり、若い世代にも受け入れられています。美術館やギャラリーへの出展も増え、市場でも評価が上昇中。日常を美しいまなざしで描く姿勢は、共感を呼ぶだけでなく、現代の生活に寄り添うような心地よさを感じさせます。

・家庭・読書・植物=現代的
・女性アーティスト再評価の流れ
・市場価値が4年で急進

■ 代表作
・《Flea Market (2020)
・《Bar Bathroom(2022)

5)ホアキン・ソローリャ Joaquín Sorolla / 1863–1923 / スペイン

水浴、ハベア(1905年)

■ プロフィール
ソローリャは、スペインの国民的人気画家です。印象派の影響を受け、自然な光を豊かなストロークで描くことを得意としました。若い頃は社会的な問題を捉えた大作を発表していましたが、次第に海辺で遊ぶ子どもや家族など健康的で祝祭的なモチーフへと系統していきました。印象派の影響は大きいものの、スペイン独自の自然主義などを取り入れるなど、最終的に唯一無二の画風へと昇華しています。

■ 評価上昇の理由
スペインの国民的画家として高い支持を受けるソローリャですが、国外での知名度は印象派と比べるとマイナーな存在でした。しかし写真のように明るく開放的な風景が、SNS時代に合った映える絵として人気が高まっています。特に海・家族・自然といったテーマは国や時代を超えて共感されやすく、世界的に支持が広がっています。近年の回顧展が好評で、再び脚光を浴びる存在になっています。

・光と空気の描写国際人気
SNS・写真文化との相性
・国際展の増加

■ 代表作
・《水浴、ハベア(1905)/メトロポリタン美術館
・《浜辺の散歩》(1909)/ソローリャ美術館

4)エゴン・シーレ Egon Schiele / 1890–1918 / オーストリア

『ほおずきのある自画像』(1912年、レオポルド美術館)

■ プロフィール
世紀末ウィーンに誕生したエゴン・シーレは、鋭い線やゆがんだポーズで、人の心の奥をえぐるような作品を描いた画家です。人物画の多くは、感情がむきだしになった強烈な表現が特徴で、その表現はまさに唯一無二でした。私生活も極めて退廃的で無茶な生き方をしており、28歳という若さで亡くなりましたが、その短い生涯で数多くの印象的な作品を残しました。

■ 評価上昇の理由
近年のシーレ人気は、著作権保護期間が切れたことで作品画像が多く公開され、研究や紹介が一気に進んだことが大きな理由です。また、自己表現やジェンダー、身体性など、現代的なテーマとつながりやすく、その荒々しい表現が今の時代の感覚と響きあっています。若い世代からの注目も高く、SNSなどでもたびたび話題になります。

・著作権の終了 → PD研究・公開が活性化した
・身体表現・ジェンダーへの接続性
・ウィーン研究の深化により再び脚光を浴びる存在に

■ 代表作
・《死と乙女》(1915)/オーストリア・ギャラリー
・《ほおずきのある自画像(1912)/レオポルト美術館

3)ヒルマ・アフ・クリント Hilma af Klint / 1862–1944 / スウェーデン

「The Ten Largest, No. 2, Childhood」1907 (Wikart.orgより引用)

■ プロフィール
ヒルマ・アフ・クリントは、スウェーデン出身の女性画家です。自然や精神世界、科学など幅広いテーマに対し、丸や渦、色のリズムなどを組み合わせた独創的なスタイルで表現したことで知られます。近年は彼女の作風を抽象画として評価すべきとの声が高まりつつあり、日本でも単独個展が大きな注目を集めました。

■ 評価上昇の理由
ヒルマ・アフ・クリントは、長い間ほとんど知られない存在でした。しかし近年の研究から「抽象表現の始まりは彼女かもしれない」と論じられるようになった結果、「カンディンスキーよりも先に抽象画を描いた画家」としてセンセーショナルな存在となりました。生前は作品を公開しないよう希望していたため注目されませんでしたが、近年の回顧展で一気に再評価が進んでいます。作品の鮮やかな色彩や象徴的なモチーフは、現代アートの感覚とも相性がよく、若い世代にも人気が高まっています。

・「抽象の起源」を揺るがす存在としての爆発的な評価上昇
・女性アーティスト再評価の流れ
2020年代に入って国際展が多数開催

■ 代表作
・《The Ten Largest, No. 2, Childhood(1907)Hilma af Klint Foundation
・《The Ten Largest, No. 3, youth(1907)/同

2)ギュスターヴ・カイユボット Gustave Caillebotte / 1848–1894 / フランス

■ プロフィール
初期印象派の主要メンバーとして知られるカイユボットは、自然の柔らかい光よりも都会の空気を好んだ画家でした。パリの町を見下ろすような斜め構図や、濡れた道、整った街並みなどは、当時としては極めて斬新な視点に注目しました。また仲間への作品購入など、支援者としても活動していたことから「印象派のパトロン」と呼ばれることもあります。貧乏だったクロード・モネやルノワールが画家を諦めずにいられたのも、カイユボットの貢献なしにはあり得なかったわけです。

■ 評価上昇の理由
カイユボットが再評価されているのは、都会の何気ない瞬間を新しい視点で捉えた都市画家としての魅力が再発見されているからです。写真のように大胆な構図や、パリ改造時代の雰囲気をリアルに伝える描写が、現代の感覚にも通じると話題に。さらに近年の大規模展をきっかけに、単なる支援者ではなく優れた画家としての存在感が再認識されています。

・印象派の再文脈化都市性・構図性の再評価
・大規模展が続き、専門研究書が増加した
・近代性を読み解く上での重要性が評価されるようになった(他の印象派への支援など)

『パリの通り、雨』1877年 シカゴ美術館

■ 代表作
・《パリの通り、雨》(1877)/シカゴ美術館
・《床削り》(1875)/オルセー美術館

1)ピーテル・デ・ホーホ Pieter de Hooch / 1629–1684? / オランダ

自画像とされる作品(1648/1649)
デ・ホーホ画『家の裏庭にいる三人の女と一人の男』1663-65頃-アムステルダム国立美術館

■ プロフィール
ピーテル・デ・ホーホは、オランダ黄金期に活躍した画家です。家の中や中庭など「日常の風景」の描写を得意としました。とくに窓から差し込む光や、部屋の奥まで続く空間の処理がとても巧みで、静かな生活の一瞬を丁寧に切り取った作風で知られます。同時代のフェルメールと比較されることも多いですが、より家族の温かさや生活感を感じさせる点ではデ・ホーホが秀でていました。

■ 評価上昇の理由
長年にわたってフェルメールの陰に隠れていたデ・ホーホですが、ここ数年フェルメールの影にいた名手という悲劇的な立ち位置によって、むしろ注目を集めるようになりました。遠近感を強く意識した構図、光の使い方、家庭の空気感を描く表現は現代人にも響き、近年はオンライン公開の充実で作品を目にする機会が増えたのも追い風です。展覧会や研究が進む中、「実はフェルメールとは別の魅力を持つ画家」として独自の評価が高まっています。

・フェルメール人気が安定し、同時代の室内画への関心が高まった
Rijksmuseum 等で展示の強化が進んでいる
・都市生活/家庭の親密さという現代性
・公共コレクションが豊富画像流通性が高い

■ 代表作
・《中庭の母と子》(1658)/アムステルダム国立美術館
・《紳士と婦人のいる室内》(1663)/ロンドン・ナショナル・ギャラリー

最後に

いかがだったでしょうか?
今回ランクインした芸術家の多くが、あまり日本では馴染みが無い面々ばかりとなっています。

彼らがこれまで浸透しなかった理由は主に二つ。
・著作権の都合
・同時代の著名な芸術家の存在感が強すぎた
ということです。

しかし時代の流れと共に著作権の壁は取り払われます。
また、同時代の著名な芸術家の存在が強すぎたことも、芸術文化の成熟と共に状況が変わっていきます。
研究が進むことで著名な芸術家たちの周囲の存在に脚光が当たり、人々もそういった不遇の存在に注目し、両者の関係性にドラマを見出すわけです。

すでにヒルマ・アフ・クリントは2025年に日本でも大規模な回顧展が開催され、大きな成功を収めました。
他の芸術家たちも、いずれ日本で企画展が計画されることでしょう。