2022.02.10
ヴェニスが舞台になった名作5選
今回は「ヴェニスが舞台になった名作5選」と題し、戯曲、映画、小説からヴェニスにまつわる作品をご紹介します。
ヴェニスはヨーロッパの中でも屈指の観光地であり、昔から多くの観光客そして芸術家たちを魅了してきた街です。今回はそんなヴェニスを舞台にして成功をおさめた5作品と、その背景についてご紹介いたします。
なお、本文にてヴェネチア、ベネチア、ヴェニス、ベニスという表記が混在しています。イタリア語で読むか英語で読むかなので音は変わりますが4つの言葉は同じ場所を指しています。それをご注意の上お読みいただけると幸いです。それでは解説を始めてまいります。
Contents
『ヴェニスに死す』 (小説)トーマス・マン/(映画)ルキノ・ヴィスコンティ
【あらすじ】
休暇をとってベニス(ヴェネチア)に静養にやってきたドイツの老作曲家が、まるでギリシャ彫刻のような容姿をした美少年に心を奪われてしまったことからベニスを離れられなくなり、街に蔓延する疫病によって命を落としてしまうまでを描いた“愛と死の大交響詩”。(引用:価格.com)
【作品解説】
本作こそヴェネチアが舞台の作品の代名詞と言えるものでしょう。小説、映画ともに非常に有名ですが、『ヴェニスに死す』が世界的に有名になったのはルキノ・ヴィスコンティ監督が映画を手がけたことによる部分が大きいとされています。
ヴィスコンティは“イタリア映画界の巨匠”と評され、『山猫』(1963)、『異邦人』(1967)など数多くの名作を映画史に遺しました。1971年に公開された『ヴェニスに死す』では、理性をも超越した圧倒的な ‟美” に、人をたじろがせ、破滅へ向かう残酷さが潜んでいることを格調高い映像美で示しています。ヴェニスを語る上で一度は見ておきたい名作中の名作です。
『ヴェニスの商人』 (戯曲)ウィリアム・シェイクスピア
【あらすじ】
裕福な貴婦人ポーシャへの恋に悩む友人のため、貿易商アントニオはユダヤ人高利貸しのシャイロックから借金をしてしまう。担保は自身の肉1ポンド。商船が難破し全財産を失ったアントニオに、シャイロックはあくまでも証文どおりでの返済を迫るのだが…。(引用:Amazon)
【作品解説】
本作はルネサンス期のイギリスを代表する劇作家シェイクスクスピアによって書かれた戯曲の一つです。シェイクスピアの戯曲は喜劇・悲劇・歴史劇・ロマンス劇といった4つのジャンルに分けられ、『ヴェニスの商人』は喜劇に分類されます。本作はシェイクスピアの手がけた喜劇の中でも、もっとも有名でもっとも愛された作品です。
ちなみにシェイクスピアの四大悲劇に数えられる戯曲『オセロー』も、ヴェニスが舞台となっています。シェイクスピアが活動したのは16世紀から17世紀にかけてのことで、日本では安土桃山時代からようやく江戸時代が始まった時期にあたります。このことからも、ヴェニスという街がいかに古くから多くの人々にとって魅力的な街であったかお分かりいただけるのではないでしょうか。
『旅情(Summertime)』(映画)デヴィッド・リーン
【あらすじ】
ベニスに観光で訪れたオールド・ミスのジェーンは、そこでレナートというハンサムな男性と知り合う。彼の案内でベニスを観てまわる内、ジェーンは次第にレナートに淡い恋心を抱いていく。だが、レナートに息子が居ることを知ったジェーンは、自分がからかわれていたと思い込み、ベニスを立ち去る決心をするが……。有名なラスト・シーンが心に染み入る傑作メロドラマ。(引用:allcinemaより)
【作品解説】
こちらもヴェニスと言えば、必ず取り上げられるほど有名な作品。ヴェニスを舞台に繰り広げらえるロマンチックな恋の物語をみることができます。本作の魅力はなんといっても水の都ヴェニスの美しい景色がこれでもかと言うほど画面に映し出されていることにあります。ヴェニスの美しい街、空、海にロマンチックな男女の描写が重なることで、一層魅力的な映画となっています。きっと本作を見た方はヴェニスに行きたいと感じられることでしょう。
本作の監督となったデヴィッド・リーンはイギリス映画界の巨匠と評される人物であり、スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシといった現代の映画界を代表する監督たちにも多くの影響を与えました。
『リトル・ロマンス』(映画)ジョージ・ロイ・ヒル
【あらすじ】
パリっ子ダニエルとアメリカ娘のローレンはともに13歳。ベルサイユ宮殿で出会った彼らはたちまち意気投合するが、ローレンはアメリカに帰国しなければならなくなった。ふたりは、その前に“サンセット・キスの伝説” —ベネツィアにある「ためいきの橋」の下で、日没の瞬間にキスした恋人たちは永遠に結ばれる— を実行しようと決める。この伝説を教えてくれたジュリアス老人とともにベネツィアに旅立つが大人たちは誘拐と勘違いして…。(引用:ワーナーブラザーズ公式サイトより)
【作品解説】
本作は13歳の男女2人が永遠の愛を誓うために、1つの伝説を残すために旅をする物語。青春というには幼い年の二人の、恋愛とも言い難いほのかな感情が美しい映像と音楽にのせてセンチメンタルに描かれています。13歳の二人がヴェニスにある「ためいきの橋」の下に向かう紆余曲折の描写が映画の多くを占めるため、ヴェニスは後半に少し出てくるだけですが、短い時間の中にヴェニスの魅力が凝縮されています。
監督を務めたジョージ・ロイ・ヒルは音楽大学出身という経歴を持っており、音楽の使い方において非常に高い評価を得ている人物です。効果的に使われた音楽は、よりいっそう作品の世界に引き込んでくれるでしょう。
『ヴェネツィアの宿』(エッセイ)須賀敦子
【あらすじ】
ヴェネツィアのフェニーチェ劇場からオペラアリアが聴こえた夜に亡き父を思い出す表題作、フランスに留学した時に同室だったドイツ人の友人と30年ぶりに再会する「カティアが歩いた道」。人生の途上に現われて、また消えていった人々と織りなした様々なエピソードを美しい名文で綴る、どこか懐かしい物語12篇。(引用:Amazonより)
【作品解説】
本作は24歳で初めてイタリアを訪れ、29歳からの13年をイタリアで過ごした著者、須賀敦子によって書かれた短編集です。須賀は56歳でイタリア体験をもとにした文筆活動を開始し、さまざまな賞を受賞しました。『ヴェネツィアの宿』は彼女の代表作として知られています。緻密で温かく、丁寧に書かれた文体は読者にヴェネツィアの情景や色彩を具体的に思い起こさせます。言葉だけで自身の見てきたものを、描いている作品とも言えるでしょう。本作は日本人女性がどのようにヴェネツィアを見たかが語られた作品であり、是非ともご一読いただきたい一冊です。
まとめ
今回はヴェニスが舞台となった名作5選と題しまして
『ヴェニスに死す』 (小説)トーマス・マン/(映画)ルキノ・ヴィスコンティ
『旅情(Summertime)』(映画)デヴィッド・リーン
『ヴェニスの商人』 (戯曲)ウィリアム・シェイクスピア
『リトル・ロマンス』(映画)ジョージ・ロイ・ヒル
『ヴェネツィアの宿』(エッセイ)須賀敦子
を紹介させていただきました。本作を通じて多くの人たちが恋をした”ヴェニス”を感じていただけると幸いです。
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