ARTMEDIA(TOP) > 【展覧会レビュー】バンクシー展 天才か反逆者か 横浜

2020.08.25

【展覧会レビュー】バンクシー展 天才か反逆者か 横浜

こんにちはクリエイトアイエムエス編集部です。今回私はこちらの展覧会に行ってきました。

「バンクシー 天才か反逆者か」展

9/27(日)まで横浜アソビルにて開催される展覧会で、世界5都市で100万人以上動員した今も最も注目を集めている芸術家の展覧会です。今回の感想を一言でお伝えするのであれば

「行っといてよかった」!!これに尽きます。

申し訳ないのですが当初この展覧会に全然期待していませんでした。以前横浜のアソビルには足を運んだことがあって芸術を楽しむ場所というより商業施設のイメージが強かったのと、中規模展覧会だし、複数のコレクターの作品が中心だし、9月後半から東京でもっと大きな規模で展覧会されるし、みたいな理由からバンクシーの展覧会は行ってみたいけど今回じゃなくていいかなっていうのが行く前の率直な意見でした。

もう一度言います、この展覧会にはぜひ行っていただきたいです。

なぜ横浜のバンクシー展に行くべきなのかを今回の記事でお伝えしていきたいと思います。

 

「バンクシーって?」

そもそも皆さんはバンクシーにどんな印象を抱いていますか?最近何かと話題の芸術家で、新作が見つかるとニュースになることも多いので芸術に関心がなくてもご存じの方は多いと思います。

世間的には神出鬼没で最近アート界を騒がせている匿名芸術家といった感じですかね?皆さんはバンクシーといえば真っ先にこんな作品を思い浮かべるんじゃないでしょうか。

バンクシー 「東京2003」

これはステンシルグラフィックといって、簡単にいうと型をつかって文字やイラストをいろいろなものにプリントする技法です。これはバンクシーの代名詞的なもので本展でも作品の大多数がこのステンシルの作品でした。

 

レビューに行く前にバンクシーの簡単なおさらいをしておきましょう。

イギリスのストリートアートから世界に名を轟かせた匿名芸術家です。なかでもメッセージ性の強い作品が高い評価を得ていますね。美術館に自身の作品を無許可で展示したり、1.5億で落札された作品をシュレッダーにかけるなど過激なパフォーマンスも彼のの特徴のひとつで、別名「芸術テロリスト」とも言われています。

バンクシーが無許可で作品を展示する様子
切り刻まれた「ガールウィズバルーン」

「行くべき理由」

そんな謎に包まれている芸術家、バンクシーの漠然としたイメージが明瞭になる展覧会がこの「バンクシー展 天才か反逆者か」です

とにかく初心者にもわかりやすい展覧会で、直感的にバンクシーのイメージを抱くことができます。

例えば「消費」や「政治」などのカテゴリー別に作品が展示されていて、作品の意図を読み取りやすくなっています。またバンクシーは絵以外にも、テーマパークやホテルなどを使った型破りな芸術表現をしています。その再現された空間があるので、一目でどんなことをしている芸術家なのかが非常にわかりやすく展示がされています。

ネズミの関連作品のほかにも「ラブイズインジエアー」や「ガールウィズバルーン」などが展示されています。「ガールウィズバルーン」は、サザビーズオークションでシュレッダーにかけられた時の動画と一緒に展示されています。多くの人がニュースなどで一度は目にしたことがある作品が多く展示されているので楽しい感覚のまま最後まで見ることができます。

 

個人的に好きだったのは、警察の体制を風刺している作品が展示されているスペースです。

バンクシー 「スマイリーコッパー」

これは「スマイリーコッパ―」という作品で、バンクシーが作り出した初期の象徴的イメージのひとつ。スマイルマークが警官の格好をして武器を身に着けています。一見友好的に見えますが、手にはマシンガンを持っていて画面の中にあるこの違和感がバンクシー作品に現れる特有のものなんだと感じる事ができます。

バンクシー曰く「現代社会において民間人を標的とした警察の暴行はもはや珍しくない。しかもそれは組織的なものへと変化してきている。権力と権威を振りかざす奴らにはうかがってかかれ」という皮肉と批判を込めてこのイメージを生み出したようです。

525日に黒人男性を抑えつけて死亡させた白人警官のニュースが大きな問題になっていますね。まさに今問題となっていることがこの作品の中にあるように感じました。
(バンクシーは、この問題をテーマにした作品を発表して話題となりましたね)

バンクシーが人種差別を主題とした作品

こういった現代社会の歪みに対する疑問や怒りが、芸術家バンクシーの創作の原動力になっているのではないかと思います。

そもそもバンクシーがネズミをモチーフにした作品をたくさん描いているのは、イギリスではネズミが電線や家財を食いちぎる社会の敵と嫌われていて、バンクシーはそのネズミに自分自身を重ねたからと考えられています。僕はそれを音声ガイダンスから知ったのですが、そういったバンクシーの創作活動のスタンスや意図が、鑑賞しているうちに自然と見えてくるんですね。

 

「展覧会で得られるもの」

本展を一言で言えば、バンクシーの足跡を通して彼の芸術家としてのあり方が誰にでもわかる展覧会となっています。

バンクシーが何者ということに関してはもう少し情報や作品が欲しいなというのが正直なところでしたがそもそもバンクシーは匿名の芸術家なので人物像に迫っていくのは少し難しいのかもしれません。どちらかというと今回の展覧会は世間に対して作ってきたイメージをつかめるようになっています。なのでバンクシーのことについて知らなくていもバンクシーってこんな感じの世界観から作品を生み出しているのかどんなことに関心を示して作品制作をしているのかということを感じるようになっています。

みなさんにも実際に会場に足を運んでいただいてバンクシーは天才なのか、それとも社会やアートに対しての危険分子なのかその目で確かめていただければと思います。なにより純粋に楽しいので9月の後半に展覧会が終わってしまう前にいってみるのはいかがでしょうか。

バンクシーの展覧会は8月末に東京でも開催される予定もありますのでその展覧会にも足を運んでこの展覧会の比較などもしていきたいと思います。

 

(著:クリエイトアイエムエス編集部 畑山)