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2020.08.25

【展覧会レビュー】DIC川村美術館の見どころ

DIC川村美術館の見どころ

皆さんはこちらの美術館をご存知でしょうか??

千葉県の佐倉市にある私立美術館『DIC川村記念美術館』です

この美術館はアート好きがこぞっていくところで個人的に一番好きな美術館の一つです。土地柄かなり行きにくい場所にありますが本当に行く価値しかない美術館です。DIC川村記念美術館とは、印刷インキのメーカーであるDIC株式会社が、その関連会社とともに収集した美術品を公開するための総合研究所施設です。

この作品すごいなっていうのと同時によくここまでの作品を集めたなという違った見方をしてしまうのはきっと私だけではないと思います。

今回の動画ではなぜ僕がDIC川村美術館に惹かれているのか魅力をランキング形式でお伝えしていきたいと思います

 

川村美術館の見どころランキング 第3位

DIC川村記念美術館の見どころランキング第3位は「自然との一体感を感じられる美術館です。

美術館前の庭と池
施設内のカフェテラス
施設内の森

実は、川村美術館の周りは自然に溢れていて、大きな公園や森、大きな池があって、多くの自然に囲まれています。四季の変化によって印象も変わるのでそこも楽しみのひとつです。暖かい季節には、ピクニックにもおすすめです。これは都心の美術館ではなかなか味わえない。この特徴は都心からある程度離れているからこそのものとなっています。

しかしただ緑に囲まれているということだけで終わらないのがDIC川村記念美術館。広大な自然と一体になったフランク・ステラ、ジョエル・シャピロ、ヘンリー・ムーアなどの彫刻作品が展示されて開放的な場で作品観賞することができます。そしてそれは屋外だけではありません。

ヘンリー・ムーア
フランク・ステラ

外光が差し込む展示室や部屋を移動する時に窓から見える自然豊かな庭、両脇が大きなガラス窓でまるで森の中にいるように感じる展示室があったりするなど、美術館では味わえない開放的な空間が作られています。一般的に美術鑑賞の際に外光を取り込むと疲れを軽減させることができると言われています。

開放的な展示空間

  こうした工夫は、美術館を設立した川村勝巳(1905-1999)と、盟友だった建築家・海老原一郎による、内部空間の繊細なバランスに配慮した設計によるモノです。

つまりDIC川村記念美術館は、屋内屋外どちらにいても自然の癒しを感じられる、まさにストレスフリーな美術館なんです。

川村美術館の見どころランキング 第2位

DIC川村記念美術館の見どころランキング第2位は「日本屈指の戦後アメリカ美術の作品群」です。

この美術館のコレクションで個人的に一番注目していただきたいポイントです!!

もちろんエコール・ド・パリ、印象派、20世紀ヨーロッパ美術とかの作品も必見なのですが特に戦後アメリカの芸術の作品のスケールには圧倒されるばかりです。

(ヘンリー・ムーア、マーク・ロスコ、モーリス・ルイス、ヨーゼフ・アルバース、ジャン・アルプ、アド・ラインハート、イヴ・クライン、ロバート・ライマン、ジャクソン・ポロック、フランク・ステラ、アンディ・ウォーホルなど)

僕がこの美術館に行こうと思ったのは、このマレーヴィッヂの作品を見たかったからなんです。日本にいてマレーヴィッヂのシュプレマティズムを見られるのは、日本で唯一、DIC川村記念美術館だけです。

マレーヴィッヂ 「シュプレマティズム」

しかしその本来の目的を忘れてしまうほどの衝撃が、戦後アメリカ美術の作品群にはありました。本当に1940年代後半から1950年代にかけて世界を席巻したアメリカの抽象表現主義に分類される芸術家の作品群は圧巻です。抽象表現主義の代表的な芸術家ジャクソン・ポロックからロスコ、アド・ラインハート、モーリス・ルイス、フランク・ステラなどの何メートルにも及ぶ作品の圧倒的なスケールは一度見たら忘れられない印象となりました。抽象表現主義の作品は大きさも特徴の一つだということは広く知られています。画集やインターネットでは感じることのできない体験ができたと今でも鮮明に覚えています。

ジャクソン・ポロック

もちろん抽象表現主義の作品がただ展示されているわけではなく、19世紀後半から20世紀半ばに起こった各国の芸術の動向を踏まえた上で戦後のアメリカの抽象表現主義の作品が展示されています。会場を進んで行けば行くほど時代の精神や流れを感じることができます。作品を多数借入するような一つのテーマに絞った大型展覧会のようなものであればここまでの作品を一度に展示することは可能かもしれませんが戦後アメリカ美術までの流れをつながりを持ってここまでの展示ができるのはコレクションが充実しているからに他なりません。これを特別展でなくコレクションで比較的いつ来てもこの流れを体感できるのは、DIC川村記念美術館ならではの特徴です。一度に展示されるコレクションは美術館が保有する1000点以上の作品の中から厳選された100点ほどで、(行く頻度にもよりますが)僕が行く度に展示替えがされています。なので、何度行っても満足度の高い美術館となっています。一方で展示替えがよくされているので時期によっては見たい作品が展示されてない可能性も結構あります。展示一覧はホームページから見られるので行く前にチェックは必須です。

川村美術館の見どころランキング 第1位

DIC川村記念美術館の見どころランキング第1位は「ロスコ・ルーム」です。

ロスコルーム

DIC川村記念美術館に訪れたことのある方はやっぱり!って思うと思います。ただこれは川村美術館の一番の見どころで間違いありません。これを目当てに会場を訪れる方もかなりの数でいると思いますし、イメージとしては川村記念美術館=ロスコルームというくらいこの美術館の目玉になっています。というのもロスコの作品だけ満たされたこのロスコルームは世界でたった4ヶ所のみ。ワシントンDC、ヒューストン、ロンドン、そして佐倉!

マーク・ロスコ(199031970)は元々ユダヤ系のロシア人で、戦後アメリカに渡ってきたという、非常に複雑なルーツを持っています。彼の晩年の作品はロスコ様式と呼ばれていまして、その固有の表現は今もなお高い評価を得ています。地から色が浮遊して、みた人の目の前ににじみ広がるような彼の作品は「瞑想するアート」とも言われています。多くの方はロスコの作品を前にした時神秘性や宗教性を強く感じるそうです。で、その瞑想するアートの完成形が、このロスコルームというわけですね。

ロスコの作品を見たいと思った時意外と日本に収蔵されていることも多いです。(大阪市立美術館、国立新美術館、福岡市銀行、セゾン美術館(軽井沢)、和歌山県立美術館、滋賀近代美術館、原美術館)

でも、この「瞑想するアート」をしっかり体感してもらうには、やっぱりDIC川村記念美術館に行くしかありません。

ロスコルームっていうのは、マークロスコの作品だけが展示されている変形7角形の光を抑えた天井の低い室内。その中に約2メートルの作品から、約4メートルの大作までの7点展示されています。言い換えればたったそれだけの空間。しかもそこに展示されている作品の特徴は平坦な一色の地に同系色で大きな四角形が一点か二点塗られているだけ。たったそれだけなのにこの作品には日常では感じることのできない神秘性があります。近づいて見てみると毛羽立ったようなところが数多くあり色同士の微妙な重なりがこの奥深さやを生んでいる事に気がつきます。またそれによって作品の中にある四角は地から浮いて空間に漂うような印象を受けます。

 「絵があなたを絵の中に連れていく、これは見る人が絵に同化することを意味している」

シーグラム壁画

とロスコは語っているんですがまさにその通りでこの静かな空間の中で作品に囲まれていると滲んだ色がこちらに近づいてきて絵の中に導かれるような感覚になるのです。

ロスコが絵画を始めた目的は絵画を音楽や詩と同様に痛烈な感情表現にまで高めることでした。作風が次々に変わったロスコでしたが晩年このシーグラム壁画を完成させた時もその根本的な目的は変わっていません。しかもロスコは生前自分の作品だけで空間を満たす場を作るとこが夢と語っていたようです。きっとこの部屋はロスコ本人にとっても、ここに訪れた方にとっても夢のような体験ができる場所なのだと思います。少なくとも私にとってはそんな夢のような場所がこのロスコルームです。

ちなみに中央にソファが置いてあって、一点をゆっくり見つめることもいいのですが、私のお勧めは、部屋の角に立って、すべての作品をグルーッと見渡すことです。ロスコルームが一人になるまで待たないといけないんですが、日常で決して感じることのできない空間に身を委ねて五感で作品を感じる、それを可能にするのがこのロスコルームなので、ぜひそれを体験していただければと思います。

以上が私が思うDIC川村記念美術館の魅力ランキング3選でした

このコロナに警戒しなくてはいけないときにも非常におすすめな美術館がこのDIC川村記念美術館です。

ご注意(アクセス方法)

上記にあるようにこの美術館は(個人的に)かなりいきにくい場所にあるためか混み合っている事がほとんどありません。現在は規制を設けていて入場券は事前時間を指定して買わないといけないのですがそれによってか通常よりもゆったりと作品を見ることができます。逆にいつも以上にゆっくりと流れる時間を美術と過ごすことのできる特別な期間だと思います。

場所柄この周辺には美術館以外に本当に何もないですが、芸術に触れる小旅行みたいな感じで足を運んでみるのはお勧めです。

※注意点

最後に通常東京駅や佐倉駅から無料送迎バスが運行しています。しかしコロナのせいで運休してるのでそれを知らずにいってしまうのは非常に危険です。おそらく徒歩ではたどり着けない美術館なのでバスで行こうとしている人は本当に注意してください。

私はいつものように何も考えず佐倉まで行きましたが、困り果ててしまいました。

要するに現在(2020/7月現在)DIC川村記念美術館に行くには車以外の手段はありません。皆さんが足を運ぶときはこの事にだけ注意していただければと思います。