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2020.12.04

蓮井幹生個展 For yesterday

「大切なもの」への問いかけ。写真家・蓮井幹生による自伝的作品の新作展示。

WHYNOT. TOKYOでは、2020年12月10日[木]から12月27日[日]までの期間、写真家 蓮井幹生の個展「For yeseterday」を開催致します。
本展は、「網膜に写るものに意識が反応した時に写真という行為は始まる」と語る蓮井が、「意識として過去」の中に仕舞われた自身の人生を呼び起こし、新たに現像した全作未公開の作品展示となります。『For yesterday』と題されたこの展覧会は、各作品に作家が寄せたテキストと合わせて写真をご鑑賞を頂きます。作家の自己開示によって、時代を超え再び現出した「網膜が像を捉えた瞬間」。現像ののち、目の前に提示された人生の確かなひとときを目撃する鑑賞の経験は、私達を「大切なものとは何か」という普遍的な問いかけへ誘うものとなることでしょう。

『For yesterday』シリーズより、2020年、ゼラチンシルバープリント©︎Mikio Hasui

「 今回の写真にも、言葉をつけることは難しいが、改めてこの過去の一瞬を焼いてみると、その時の網膜と意識の距離が蘇ってくる。様々な感情になって。写真はすべてが過去である。時間として過去ではなく、意識として過去である。その時に網膜が見たことから、意識はどのくらいの距離を保っているのだろうか。」
ー 蓮井幹生

『For yesterday』シリーズより、2020年、ゼラチンシルバープリント©︎Mikio Hasui

儚く、壊れやすい人生の中で、網膜に捉えられては意識の奥底に残り続ける忘れ得ぬ光景。

「時間は、本当は過去に流れているのだ。」という作家の独白は、人がそこに生きることの儚さや弱さをより一層印象付けます。『For yesterday』において、蓮井がライフワークとして取り組んできた水平線に向けられた眼差しは水面を見下ろし、抽象的な光と色彩は分断される世界の光と闇として写し出されます。
水面の揺らぎ、不安定な構図で撮られた街角で蹲る老婆、親子が共に過ごした病床での静かな午後。「そこに存在した」という特定の相手に向けられた眼差しは、その確からしさを信じる作家の強い願いとなり作品に結実して行きます。

手放した光景、あるいは手放さざるを得なかった光景が公共化されることで、過ぎ去った瞬間に新たな生を与える『For yesterday』。

作家自身の意識が作品を通して起こされ、見るものの心に静かに浸み渡る時、私達のそれぞれが持つ私的な記憶もまた再び思い起こされることでしょう。過去を未来として受け入れた蓮井が創り出す「生かされていること」の再認識は、私たちに明日を見つめる目を与えてくれるのかも知れません。

展覧会会期:2020年12月10日~12月27日
会場:WHYNOT. TOKYO
住所:〒153-0053 東京都目黒区五本木2-13-2 1F
営業時間:13:00-19:00(木〜日曜日、祝日)

◆オープニングオンライントーク
蓮井幹生(写真家) x LILY SHU(アーティスト)
開催日時:2020年12月10日 20:00-
トークURL: https://youtu.be/_g5-7dfzJgg

 

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蓮井幹生 | Mikio Hasui
写真家 1955 年生まれ

明治学院高校、同大学社会学部社会学科に入学。アートディレクター守谷猛氏に師事しデザインを学ぶ。1984 年から独学で写真を始め、1988 年の個展を機に写真家への転向。新潮社の雑誌「03」を始めとするカルチャー系エディトリアルシーンで著名人のポートレイト作品を発表し注目を集める。1990年代から撮影が続く『PEACE LAND』は作家の世界観の中核を成す作品群であり、作品集の出版を通して継続的な発表が行われ2009 年にフランス国立図書館へ収蔵される。現在は、長野を拠点に制作を行う。

【作家ウェブサイト】
https://mikiohasui.com/