2023.05.19
知っておきたいドイツを代表する32人の芸術家
今回お届けするのは「知っておきたいドイツを代表する32人の芸術家」です。
ドイツといえばヨーロッパ有数の芸術大国。特に近代から現代にかけての芸術の発展はめざましく、現在でも第一線で活躍する芸術家を輩出し続けている国です。大きな芸術の流れではユーゲント・シュティール(独版のアール・ヌーヴォー)、ドイツ表現主義、構成主義、新即物主義があります。
ドイツは、古くからヨーロッパの大国だったこともあり、政治や経済といった時代の大きな流れに翻弄されながら文化が発展したため、ドイツ芸術には社会性が色濃く現れるのが特徴です。
今回はドイツ芸術の歴史の中でも特に後世に影響を与えたと考えられるドイツの32名の芸術家(主に画家)を、年代順に紹介してまいります。
(主に画家)
Contents
- 1 アルブレヒト・デューラー
- 2 ルーカス・クラナッハ・ザ・エルダー
- 3 ハンス・ホルバイン・ザ・ヤンガー
- 4 アダム・エルスハイマー
- 5 カスパー・ダヴィッド・フリードリヒ
- 6 フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター
- 7 マックス・クリンガー
- 8 ロヴィス・コリント
- 9 アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー
- 10 オットー・エックマン
- 11 エミール・ノルデ
- 12 フランツ・マルク
- 13 ハンス・ホフマン
- 14 エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー
- 15 マックス・ベックマン
- 16 ジャン・アルプ
- 17 アウグスト・マッケ
- 18 ヨーゼフ・アルバース
- 19 オスカー・シュレンマー
- 20 マックス・エルンスト
- 21 オットー・ディックス
- 22 ジョージ・グロス
- 23 ヴォルス
- 24 ヨーゼフ・ボイス
- 25 ゲルハルト・リヒター
- 26 ハンス・ハーケ
- 27 ゲオルグ・バゼリッツ
- 28 シグマー・ポルケ
- 29 アンセルム・キーファー
- 30 ユルゲン・パルテンハイマー
- 31 トーマス・ルフ
- 32 ヒト・シュタイエル
アルブレヒト・デューラー
生没/1471年 – 1528年
ルネサンスを代表する芸術家、理論家。後期ゴシックとルネサンスとを融和に導いたドイツ絵画の父であると同時に、美術史上最も重要な画家の一人。
【代表作】
ルーカス・クラナッハ・ザ・エルダー
生没/1472年 – 1553年
デューラーに次ぐドイツ・ルネサンス期を代表する芸術家。息子も画家でありさらに全く同じ名前であるためルーカス・クラナッハ (父) と表記されることが多い。宗教改革を行ったルターの活動を支持し、宗教画を数多く手がけた。
【代表作】
ハンス・ホルバイン・ザ・ヤンガー
生没/1497年頃 -1543年
16世紀の最も偉大な肖像画家の一人。同名である父も芸術家だったためハンス・ホルバイン(子)と表記されることが多い。宗教美術や風刺、宗教改革のプロパガンダなども制作し、ブックデザインの歴史にも大きく貢献した。
【代表作】
アダム・エルスハイマー
生没/1578年 – 1610年
17世紀初期に活躍したドイツ人画家。作品にはさまざまな照明効果が施され、風景画については革新的な処理を施した。レンブラント、ルーベンスなど多くの画家たちに影響を与えた。
【代表作】
カスパー・ダヴィッド・フリードリヒ
生没/1774年-1840年
ドイツのロマン主義絵画を代表する芸術家の一人。宗教的含意をふくむ風景画によって知られる。日本ではほとんど無名だが、ヨーロッパ各国では広く知られた人物である。
【代表作】
フランツ・クサーヴァー・ヴィンターハルター
生没/1805 – 1873
19世紀中葉、王侯貴族に愛されたドイツ人画家。派手やかな宮廷肖像画の代表的存在である。パリを拠点にヨーロッパ中の貴族の肖像画を描いた。ヴィクトリア女王やナポレオン3世、フランス国王ルイ・フィリップなどの肖像画も手がけた。
【代表作】
マックス・クリンガー
生没/1857年 – 1920年
シュルレアリスムの先駆者と評されるドイツ芸術家。19世紀末に勃興した象徴主義との関わりが深く、優れたデッサン力と版画技法によって写実的な版画作品を手がけた。作品はルドンと並ぶほどの幻想的な版画と評されており、あらゆる芸術(彫刻や音楽など)に興味を持ち、それらの融合を目指し制作をした。
【代表作】
ロヴィス・コリント
生没/1858年 – 1925年
ドイツの印象主義を代表する画家の一人。パリで美術教育を受け、その後ドイツを拠点として活動した。ミュンヘン分離派の創設メンバーやベルリン分離派の初代会長を努め、ドイツ国内におけるモダニズム芸術の発展に大きく貢献した。晩年には表現主義的な作品に取り組んだことも広く知られている。
【代表作】
アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー
生没/1864年~1941年
ドイツ表現主義を代表するロシア系ドイツ人の画家。カンディンスキーと交友があり、20世紀初頭にミュンヘンで結束した青騎士の中心メンバーだった。人間の「頭部」をモチーフにして描き続けた一連のシリーズが広く知られている。
【代表作】
オットー・エックマン
生没/1865-1902
ユーゲント・シュティール(独版のアール・ヌーヴォー)の代表的なイラストレーター、工芸デザイナー。美術学校では絵画を学んだが早々に絵画の制作を辞め、雑誌のイラストや家具、陶器、タイルなど生活の中に現れる装飾に専念し、流派の代表的な人物となった。
【代表作】
エミール・ノルデ
生没/1867年~1956年
ドイツ表現派の巨匠。ノルデ自身はグループに属することを好まず、終始独自の道を歩んだ。色彩豊かな美しい水彩画や版画が特徴で、ナチスによって彼の人生が翻弄されたことは広く知られている。
【代表作】
フランツ・マルク
生没/1880 – 1916
20世紀初頭に活躍した、表現主義と(カンディンスキーが率いたことで有名な)青騎士の中心人物の一人。36歳という若さで戦死したため、画家としての活動期間はわずか10年だった。しかし鮮やかな色彩で描かれた動物の作品は1910年代のドイツ芸術を象徴的な作品となっている。
【代表作】
ハンス・ホフマン
生没/1880年~1966年
第二次世界大戦後の芸術の発展に大きく寄与したドイツの芸術家であり教育家。1930年代にアメリカに移住し、ヨーロッパで習得した当時最新のアートの考え方や表現を伝えた。特に後に抽象表現主義と呼ばれるアメリカの芸術家に与えた影響は多大だった。
【代表作】
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー
生没/1880年~1938年
20世紀前期、ドイツ表現主義の代表的画家の一人。ドイツ表現主義の最初の運動を進めた芸術団体ブリュッケの創立者でこれはドイツ初の前衛絵画グループとして知られている。キルヒナーはフォーヴィスムと、アフリカの民族美術に影響を受けているとされ、大胆なデフォルメと強烈な原色で描かれた人物が特徴。
【代表作】
マックス・ベックマン
生没/1884年~1950年
新即物主義(ノイエ・ザッハリヒカイト)の代表的な画家。新即物主義とは1920年代から30年代にかけた興った芸術運動を指す。表現主義を反動として生まれた芸術の流れで、冷たい視点から社会を観察し、即物的に表現(=一歩引いた位置から客観的に表現)することを目指した芸術の流れ。ベックマンは自画像とパノラマ的な視点から群像表現で描いた作品が広く知られている。
【代表作】
ジャン・アルプ
生没/1886 – 1966
ドイツ出身の20世紀を代表する芸術家(国籍はフランス)。独名はハンス・アルプ。ドイツ、フランス、スイスなど当時最新の芸術運動に身を投じた。ドイツでは青騎士に参加。有機的な不定形を持つ「具象彫刻」は彼を象徴する作品となっている。ヴェネツィア・ビエンナーレ彫刻部門賞やフランス芸術大賞を受賞するなど国際的な評価を得ている人物。
【代表作】
アウグスト・マッケ
生没/1887 – 1914
青騎士の中心的な人物の一人。マッケは27歳で戦死したため、活動期間は数年間にすぎなかったが単純化された形態と“色彩の詩人”と評される幻想的な色彩から成るで独自の様式を築き上げた。1913年から各地を旅行し、数十点もの水彩画が代表作として知られている。
【代表作】
ヨーゼフ・アルバース
生没/1888年 – 1976年
ドイツ出身の芸術家、芸術研究家、教育者。バウハウスで学んだ後、バウハウスで教鞭を握り、バウハウスの精神を最も引き継いだ人物。違う色の正方形をいくつか重ねたグラデーションの作品が有名で、その作品を通して体系化した色彩構成(理論)は後の芸術家やデザイナーに多大な影響を及ぼした。
【代表作】
オスカー・シュレンマー
生没/1888年 – 1943年
アルバース同様、バウハウスで教鞭をとった舞台芸術家、画家、教育者。他の工芸学校にはなかった舞台芸術の工房を担当し、舞台芸術の発展に大きく寄与した。また人間工学の視点から制作された作品は広く知られており、20世紀を代表する芸術家の一人に数えられる。
【代表作】
マックス・エルンスト
生没/1891年 – 1976年
ドイツ出身の20世紀を代表する芸術家(国籍はフランスとアメリカ)。ダダイスムとシュルレアリスムにおける最重要人物の一人で新たな技法を開発しながら制作を行った。「フロッタージュ」という彼が開発した技法や「デカルコマニー」といった技法、コラージュを多用した神秘的で幻想的な世界観を持つ作品が特徴。
【代表作】
オットー・ディックス
生没/1891年 – 1969年
ベックマンと同様にディックスもノイエ・ザッハリヒカイト(新即物主義)の最も重要な画家の一人として知られている。ディクスは現実を直視し、鋭い批判精神で矛盾に満ちた戦後ドイツの頽廃した社会情勢を「魔術的リアリズム」と呼ばれるほどの生々しさで表現した。
【代表作】
ジョージ・グロス
生没/1893年 – 1959年
20世紀最大の諷刺画家。グロスはファシズムに反対してドイツ共産党に入党し離脱した経歴を持つ社会的な芸術家として知られている。政治に参画するも理想とはかけ離れた現実に落胆し、その怒りを作品に投影した。醜悪な現実を直視し暴くような不気味な作品が特徴。
【代表作】
ヴォルス
生没/1913年 – 1951年
20世紀に活躍した芸術家で主にフランスで活動した。音楽、写真、水彩、油彩、銅版画、彫刻など多岐にわたり才能を発揮して、フランスの前衛芸術運動の一つ「アンフォルメル」の先駆者と言われた。抽象表現主義の先駆的役割を果たしたという見方もある。
【代表作】
ヨーゼフ・ボイス
生没/1921年 – 1986年
20世紀最も影響力のあった芸術家。社会活動家としても広く知られている。芸術が社会と関わりを持ち、社会を変える力を持つことを強く訴えた最初の芸術家と評される。 「社会彫刻」、「拡張された芸術概念」といった独自の芸術概念を打ち立て、その後の芸術に計り知れない影響を及ぼした。
【代表作】
ゲルハルト・リヒター
生没/1932年 –
ドイツが誇る現代芸術最大の巨匠。途方もない数の実験的な表現を行い、先駆者として20世紀後半のアートシーンを牽引した。具象表現と抽象表現の狭間で、人がものを見て認識するという原理に一貫して取り組んでいる。
【代表作】
ハンス・ハーケ
生没/1936年 –
社会やアート業界の不正をアートで問題提起するポリティカルアートや作品ができるまでの経過を作品の一部として表現するプロセスアートの代表的な芸術家。世界的に知られた人物であり、1993年の第45回ヴェネチアビエンナーレでは金獅子賞(最高賞)を受賞している。
【代表作】
ゲオルグ・バゼリッツ
生没/1938年 –
新表現主義の代表的な芸術家の一人。抽象絵画の系譜からモチーフや描かれるモノへの新しい思考を発見し、同時に西洋絵画の歴史的な技法を踏まえながら、新しい絵画を制作していることで知られる。
【代表作】
シグマー・ポルケ
生没/1941年 – 2010年
ポップ・アートなどの影響を受けて、60年代後半にゲルハルト・リヒターらとともに「資本主義リアリズム」を提唱。ドットの作品で広く知られている。86年の第42回ヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞(最高賞)を受賞した。
【代表作】
アンセルム・キーファー
生没/1945年 –
戦後ドイツ、また新表現主義を代表する芸術家。ドイツの負の歴史、主にナチス・ドイツを主題とした作品を制作し、近現代におけるタブーや物議を起こす問題を積極的に作品に取り組んだ。
【代表作】
ユルゲン・パルテンハイマー
生没/1947年 –
国際展で注目を集め、世界的に注目を集めているドイツ芸術家。詩的で哲学的な観点から作品制作を行い不確実性と矛盾の状態を表現しているとされている。
【代表作】
トーマス・ルフ
生没/1958年 –
現代を代表する写真家であり、ドイツ写真の巨匠と評される人物。現代社会のメディアとイメージの関係に強い関心を示し、写真表現をコンセプチュアルアートへと発展させたことで国際的な評価を得ている。近年ではフォトグラム(レイヨグラフ)を発展させた作品を制作し、さらに注目を集めている。
【代表作】
ヒト・シュタイエル
生没/1966年 –
映像作家・ライター。映像史やメディア論を背景に、インターネット以後のイメージの流通や、社会が抱く矛盾に踏み込んだ独自の分析を展開。2017年に『Art Review』誌「美術界で影響力のある人物トップ100」第1位を獲得をした今もっとも注目すべきドイツ芸術家の一人。
【代表作】
まとめ
以上がドイツを代表する画家32名の紹介となります。正直、ドイツはあまりにも注目すべき芸術家(特に現代)が多いため、本記事で紹介できなかった方が数多くいます。また、ドイツの芸術の発展はとりわけ近代以降目覚ましかったため、近代以降の芸術家の紹介が多くなっております。特にドイツの現代芸術は常に目を見張るものがあります。
ドイツはナチス・ドイツ政権下、第二次世界大戦の敗戦、東西分断と統合などの複雑な歴史を抱え、現在では難民の受け入れやウクライナ侵攻の援助など政治や経済で様々な難問を抱えています。だからこそ現代アーティストたちは自らの見解や立場を作品によって示すことが、強く求められるといいます。そのため、今のアートを知る上でドイツアーティストたちの動きは大きな示唆を与えてくれるので、注目してみてみることをお勧めいたします。今回も芸術を学ぶきっかけになれば幸いです。
なお、本記事で取り上げた人物たちはあくまで編集者の独断と偏見で選ばせていただいたものとなっております。「後世に影響を与えた国を代表するような人物」という視点からピックアップしていますが、正確性を保証するものではありませんのでご了承ください。また本記事に掲載している画像は全てWikiart(https://www.wikiart.org/)からの引用となっております。
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