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2021.01.27

カナダで最も愛される芸術家「モード・ルイス」

この作品はカナダで最も愛される芸術家と言われる人物、モード・ルイスの作品です。

作品は非常にカラフルで愛らしい雰囲気に満ち溢れています。彼女はカナダでも広く知られた人物であり描いたポストカードがきっかけとなってアメリカのホワイトハウスに作品が飾られるほど多くの人に知られる存在となりました。辛い境遇に置かれながらも懸命に生き抜いた彼女の愛すべき人生は本やミュージカル、映画にもなっているほどです。今回はカナダで最も愛される芸術家「モード・ルイス」について解説していきたいと思います。

「portrait」Maud Lewis(出典:WikiArt.org)

モード・ルイスの生涯

モードは1903年カナダのノバスコシア州ヤーマスで生まれました。彼女は幼い頃からリウマチを患っており、その障害は彼女を苦しめ、生涯にわたり体が小さく手足が不自由だったと言われています。当時は身体障害に対しての差別がひどかったため、学校教育はほとんど受けられず、少女時代の大半を家の中で過ごしました。しかし幸いにも、彼女は決して絶望することなく、むしろ家族と長く一緒にいられることを幸せに感じていました。それを示すように、モードの作品には幸福感に満ちた子どもの頃の記憶が頻繁に描かれ、いかに家族と過ごした時間が幸福だったのかを物語っています。

しかし1935年に父、1937年に母と立て続けに先立たれ、同じノバスコシア州のディグビーに住む叔母の元へと引き取られました。ディグビーに移って間もなく、彼女は魚の小売業を営むエヴァレット・ルイスと結婚しますが、これが彼女にとっての大きな転機となります。エヴァレットはモードが絵を描くことを応援し、彼女のために油絵具をプレゼントしました。その後押しを得て、モードは絵を描くことに夢中となり、自分だけの絵を描き始めました。彼女の絵を気に入ったエヴァレットは、売り物の魚にモードの描いたポストカードを添えるようになります。すると、次第に客の間でモードの作品が評判となり、やがてモードは家の前で「絵画販売中」と書かれたボードを掲げ、自ら絵を販売するようになりました。それが多くの人の目に留まり、雑誌やテレビに取り上げられるようになります。以降、絵画の注文が相次ぐようになり、彼女はカナダで広く知られることとなったのです。さらにモードは、思いがけない大物からの注文を受けます。当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンが、彼女の評判を知って絵を注文したのです。ディグビーの魚屋から始まったアマチュア画家がホワイトハウスの壁を飾る大芸術家にまでなった彼女の人生は、カナダ芸術史に残る一大サクセスストーリーとなりました。以降も彼女の作品はカナダ国内外で高い人気を博しましたが、晩年はリウマチが悪化し、1970年に67歳で人生に幕を閉じました。

 

「Portrait of White Cat & Framed Envelope」 Maud Lewis 1967(出典:WikiArt.org)

 

「Oxen in Spring」Maud Lewis 1960(出典:WikiArt.org)

作品について

上記のとおり、彼女は独学で絵を描き続け、多くの名声を手にしました。しかし、おそらくモードにとって名声はさほど大きな問題なのではなかったと考えられます。というのも彼女が生涯を過ごしたヤーマスとディグビーは都会と遠く離れた田舎町で、リチャード・ニクソンが誰かということも知らなかったと言われます。また彼女のようなフォークアートの画家は生活のために描いている人も少なくありませんが、モードは常に自発的に制作を行なっていました。彼女を突き動かしていたのは作品の取引価格などではなく絵を描くという行為そのものを心から愛していたわけです。その純粋な想いは時が経った現在でも、カナダをはじめ多くの人に愛されています。

彼女の作品は非常にシンプルな線とカラフルな色彩が特徴で、その作風は素朴派に分類されています。素朴派とは、独学で作品制作をしていた画家のことを指し、代表的な画家としてアンリ・ルソーやグランマ・モーゼスなどが挙げられます。彼らは芸術教育を受けていないからこそ大胆な構図で描くことができ、作者ならではの無邪気さやいきいきとした生命力を表現することができたのです。中でもモードの作品には無邪気で愛らしさがあり、そしてどこか懐かしさを感じさせます。その要因の一つとして、モードが子どもの頃の記憶を作品世界に描いていたことが挙げれらます。モードの作品の題材となっていたのは、常に彼女が暮らしたノバスコシアの田舎町でした。モードの作品の中には、時と共に変化する街並みと、いつまでも色褪せることのない幸福感に満ちた家族とともにある少女時代の記憶が描かれているのです。障害を抱えながらも逞しく生き抜いた彼女の人生と無邪気で明るい人物を思わせる作品の数々は、変化する時代の中でも広く愛され続け、今なお多くの人の心に生き続けています。

 

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