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2021.04.02

【2021年最注目展覧会】モンドリアン展 純粋な絵画を求めて – SOMPO美術館

2021年で最も注目すべき展覧会『モンドリアン展 純粋な絵画を求めて』が現在SOMPO美術館で開催中です。

本展は、昨年11月に今年の注目展覧会として紹介させていただきました。

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3月23日に初日を迎えて以降、コロナ禍にも関わらず多くの来場者が訪れ、20世紀アートにおけるモンドリアンの人気の高さを改めて認識させる形となっています。そこで今回は、展覧会開始と共に開示された最新の情報とともに、改めてモンドリアン展の見所を紹介していきたいと思います。

1 モンドリアンが新造形主義に向かう軌跡

本展の見所は、なんと言っても「モンドリアンが新造形主義に向かう軌跡」を見られる事だと思います。

モンドリアンを象徴する作品といえば、上記の展覧会のチラシにもある線と色の面のみで構成されている絵画(コンポジション)です。モンドリアンは、この最小限の要素だけで小宇宙を平面の中に表現することを試みました。線と色面だけの表現に辿り着くまでに多くの試行錯誤があったことは多くの書籍で記されていますが、作品を通してその経緯を目の当たりにすることは日本ではまず叶わないことでした。

しかし、SOMPO美術館で開催中の『モンドリアン展 純粋な絵画を求めて』では、モンドリアンが線と色面だけで絵画を構成するに至った軌跡を見ることができます。

モンドリアン ポートレート

ピート・モンドリアン(1872−1944)はオランダ生まれの芸術家で、ロシアのカンディンスキーやマレーヴィッヂとともに、抽象絵画の道を切り開いた人物として知られています。モンドリアンは学生の頃から伝統的な美術教育を受けており、初期のころはオランダの風車や海岸風景を題材にして、ロマン主義や象徴主義の影響を受けた作品を描いていました。その後1911年にパリに行き、ピカソやブラックのキュビスムから強い影響を受けます。1914年の第一次世界大戦が開始されるまでパリに滞在したモンドリアンは、以降影響を受けたキュビスムをも超え、究極とも言える自身の表現方法を追求していくこととなりました。それは次第に三原色と、黒、白、グレーに限定されてた線と色面のみの表現となり、彼はこの作風を新造形主義と命名しました。

本展で紹介されている作品は、初期から1920年代半ばまでの作品がほとんどであり、特に線と色面の絵画(コンポジション)になる以前の作品が数多く紹介されています。そこには象徴主義的な作品、キュビスムの影響下で制作された作品、コンポジションと名付けられた最初期の作品など、モンドリアンのそれぞれの転換期とも言える作品を見る事ができます。コンポジションを目当てに行かれる方も多いとは思いますが、その転換期となった作品などれなんだろうという視点から見てみると、また違った見方ができるのではないかと思います。

2 デン・ハーグ市立美術館より50点借りることに成功

デン・ハーグ市立美術館

日本ではあまり知られていないデン・ハーグ市立美術館ですが、モンドリアンを語る上では欠かせない場所です。

デン・ハーグ市立美術館はオランダのハーグにある市立美術館で、1866年に「近代美術館」として設立されました。本美術館はとにかくモンドリアンの作品が多いことで知られている美術館で、モンドリアンのコレクションの数は約300点とその所蔵数は世界一を誇ります。

SOMPO美術館で開催中の『モンドリアン展 純粋な絵画を求めて』では、世界一のモンドリアンコレクションの6分の1にあたる50点の借り入れに成功したようです。

また、日本では23年ぶりにモンドリアンの展覧会が開催される事も話題となっています。23年前行われたモンドリアンの美術展は長崎のハウステンボス美術館と渋谷のBunkamuraギャラリーで開催され、いずれもデン・ハーグ美術館の改装に伴い、奇跡的に日本で開催されたものでした。

モンドリアンの展覧会を開催するためにはデン・ハーグ美術館の協力は不可欠であり、3月からSOMPO美術館で開催されている『モンドリアン展 純粋な絵画を求めて』は、ほとんどSOMPO美術館が起こした奇跡と言えるでしょう。日本で見ることのできる貴重な機会なので、是非とも足を運んでいただきたいです。

3 デ・スティルのメンバーの作品も数点展示

本展ではモンドリアンの作品だけではなく、デ・スティルのメンバーの作品も同時に展示されています。

デ・スティルとはオランダで1917年から1932年まで活動した芸術グループであり、モンドリアンはデ・スティルの理論を忠実に作品化する主要な人物として活躍しました。デ・スティルは20世紀初頭に世界中で同時多発的に起った美術運動の一つであり、「De Stijl」の名称は、メンバーたちによって刊行された雑誌の名前が由来となっています。

De Stijlは「The Style」を意味し、新しい時代に向けて新しい様式を創造することを目的として結成されました。メンバーは画家であり、建築家、美術家だったテオ・ファン・ドゥースブルフを核として、建築家でありデザイナーのリートフェルト、建築家のJ.J.P.アウト、画家であり彫刻家のジョルジュ・ヴァントンゲルロー、画家のファン・デル・レックなどがいました。このメンバーからもわかるように、非常に多分野の人物から成るグループであり、絵画だけでなく建築やデザインなど生活に関わる分野にまで大きな影響を与えました。

本展でモンドアンの作品とともに紹介されているのはドゥースブルフ、ヴァントンゲルロー、ファン・デル・レック、リートフェルトの作品です。

特にリートフェルトの作品「アームチェア」からはモンドリアンの作品が建築、デザイン、ファッション等に影響を与えた影響を見ることができます。本作はデ・スティルの思考が立体化となった好例として非常によく知られた作品です。もちろんこれはデ・スティルの思考が形になったものであり、モンドリアンだけの考え方が反映されたワケではないですが、モンドリアンの思想が大いに関係しているものです。

本作をはじめモンドリアンの作品や思考は建築、デザイン、ファッションの分野にも影響を与えています。本展に足を運べば絵画の世界を超えてモンドリアンの影響がいかに大きかったかを感じる事ができるのではないかと思います。

 

 

このほかにも見どころ満載の『モンドリアン展 純粋な絵画を求めて』

今後日本で見られる事がまずないであろう内容の展覧会なので、この機会にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

会期:    2021/3/23(火)-2021/6/6(日)

会場:    SOMPO美術館

公式HP:https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/mondrian/

時間:    10:00-18:00(最終入場時間 17:30)

休館日: 月曜日(5月3日(月・祝)は開館)

料金:    日時指定入場制   (※事前予約が必須)

           【オンラインチケット】一般 1500円/大学生 1100円/高校生以下 無料

 

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