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2021.06.04

【必見】2021年下半期 注目の展覧会5選

今回は「2021年下半期 注目の美術展5選」と題しまして、これから都内で開催される注目の美術展を紹介してまいります。

残念ながら現在は日本各地で緊急事態宣言が発令中であるため、東京の美術館の多くは臨時閉館している状況で特別展の多くは延期または中止を余儀なくされています。そのため思うように美術館に足を運ぶことができない日々が続いております。

しかし、そのような状況下でも各美術館は展覧会に向けての準備を進めており、興味をかき立てる展覧会がいくつも予定されています。

ここでは、緊急事態宣言が緩和して美術展に行けるようになった時のために、独断と偏見から選ばせていただいた注目の展覧会を5つ紹介してまいります。

1,「マティス 自由なフォルム」 国立新美術館 ※2022年に延期

マティス 自由なフォルム チラシ

 

今年の秋、近代絵画の巨匠アンリ・マティスの展覧会が、国立新美術館(東京)で開催されます。マティスは20世紀で美術史上最も大きな影響力を持ち、今なお最も愛される芸術家として知られています。マティスが生前に成し得たことは、絵画の中における色彩の革命(フォービスム)であり、彼の作品はまばゆい色彩に溢れています。

本展は、マティスの作品の中でも晩年の頃に多く制作された切り絵(グワッシュ・デクぺ)を中心に、絵画や素描などの紹介する展覧会です。

日本ではこれまでにもマティスの展覧会が数多く開かれてきましたが、切り絵を主要テーマにした展覧会はあまり多くありません。しかし切り絵は、マティスの表現を飛躍させた重要な技法であり、マティスの制作を語る上でなくてはならないものなのです。切り絵を精力的に制作するようになった時点で、マティスはすでに70歳を超えていました。しかし彼の色彩感覚とフォルムは、切り絵を通して一層洗練されていくこととなりました。

マティスは「切り絵は色彩で描くことを可能にしてくれた。私の手間を省いてくれたのだ。輪郭線を引いてから中に色彩を置くーこれだと一方が他方を規制することになる。代わりにいきなり色彩で描くことができるのであるー」と語っています。この言葉から察するに、本展のタイトルとなっている「自由なフォルム」とは、切り絵によって輪郭線という規制から自由になったマティスのスタイルを意味してるのではないかと思います。

おそらく、これまで開かれたマティスの展覧会とは一味違うものになっているはずです。マティスを知らない人も、すでに彼の企画展を見たことがある方も、どうかお見逃しなく。

追記:2021年9月に開催される予定でしたが2022年に延期されることが決定しました。(2021/06/05)

【展覧会情報(公式HPより抜粋)】
20世紀最大の巨匠の一人アンリ・マティス(1869-1954)。大胆な色彩表現が特徴であるフォーヴィスムの中心人物として20世紀初頭、パリで頭角を現します。後半生を過ごすこととなるニースでは、アトリエで様々なモデルやオブジェを精力的に描く一方で、マティスは色が塗られた紙をはさみで切り取り、それを紙に貼り付ける技法「切り紙絵」に取り組みます。
本展はフランスのニース市マティス美術館の所蔵作品を中心に、切り紙絵に焦点を当てながら、絵画、彫刻、素描、版画、テキスタイル等の作品やマティス旧蔵のオブジェ等を紹介するものです。切り紙絵が日本でまとめて展示されることはきわめて稀で、マティスの記念碑的な表現方法に触れる貴重な機会となるでしょう。なかでも同館が所蔵する切り紙絵の大作《花と果実》は、本展のためにフランスでの修復を経て日本初公開される必見の作品です。
本展ではさらに、マティスが最晩年にその建設に取り組んだ、芸術家人生の集大成ともいえるヴァンスのロザリオ礼拝堂にも着目し、建築から室内装飾、祭服に至るまで、マティスの至高の芸術を紹介いたします。

 

【基本情報】

会場 国立新美術館

会期 2022年

公式サイト https://www.nact.jp/exhibition_special/2021/matisse2021/

2,クリスチャン・マークレー展 2021/11/20(土)〜2022/2/23(水) 東京都現代美術館

現在最も注目されている現代アーティスト、クリスチャン・マークレーの展覧会がついに日本で開催されます。2011年に第54回ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞(最高賞)を受賞したことが話題になっていたので、ご存知な方も多いことでしょう。彼の制作は音楽を目に見える形に変換するという独自のもので、パフォーマンス、コラージュ、彫刻、インスタレーション、写真、ビデオから芸術と音楽文化の融合を試みています。そのため、彼は芸術家であると同時に現代音楽家でもあります。

マークレーは1979年にターンテーブルを使ったパフォーマンスをきっかけとして、音楽とアートの探求を開始。その後も即興の演奏やアルバムジャケットや別々のレコード同士を貼り合わせたコラージュ作品など、芸術に音楽という要素を掛け合わせることによって新しい価値観を創出してきました。中でも2011年にヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞した「The Clock」(2010)は彼の作品の中でも高い評価を得ています。「The Clock」(2010)は24時間にも及ぶ映像作品で、膨大な数の映画から編集された何千もの断片から、時計のシーンだけを1分毎に抜き出して、映像として繋げた作品です。いわば映像作品のコラージュとも言えるでしょう。

現代芸術は視覚による「モノ」としての芸術より、むしろコンセプトやメッセージを重視した「コト」の表現が重視されています。マークレーはそれらの「モノ」「コト」に「音」を加えることで独自の表現を生み出すことに成功しました。

本展は、そのマークレー独自の表現に触れられるまたとない機会です。ぜひ今年の11月、東京都現代美術館でマークレーの作品を五感で感じてみてください。

 

【展覧会情報(公式HPより抜粋)】
クリスチャン・マークレー(1955- )は、アートと音楽の交差点から作品を発表し続け、パフォーマンス、コラージュ、インスタレーション、写真、ビデオなどのメディアを通して、音を目に見える形に変換してきました。現代美術の最も影響力を持つ作家の一人として、2011年にはヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞する一方で、前衛音楽シーンにおいても、70年代末にターンテーブルを使ったパフォーマンスで音の実験を始めて以来、重要な表現者として活動しています。
日本の美術館での初の大規模な展覧会となる本展では、聴覚と視覚、私たちが聞いているものと見ているものの間の翻訳のプロセスを探るとともに、彼の作品への日本文化からの影響を考察します。

【基本情報】

会場 東京都現代美術館

会期 2021/11/20(土)〜2022/2/23(水)

公式サイト https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/christian-marclay/

3,山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選-写楽・北斎から琳派まで- 2021/7/3(土)〜8/29(日)山種美術館

山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選-写楽・北斎から琳派まで-チラシ
山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選-写楽・北斎から琳派まで-チラシ

山種美術館は国内初の「日本画専門の美術館」として知られています。本年は開館55年の節目にあたり、これを記念して注目の展覧会が開催されています。これまでの記事でも山種美術館の特別展は何度かお薦めさせていただきましたが、中でも7月から開催される「山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選−写楽・北斎から琳派まで−」は必見です。本展は江戸時代をテーマに、浮世絵をはじめ山種美術館の絢爛な江戸絵画が一堂に集結する貴重な展覧会となります。絵師もオールスター集結と呼ぶに相応しい豪華なメンバーが勢揃いで、日本の美術に馴染みのない方であっても十分に楽しめると思います。

中でも注目は、歌川広重の代表作「東海道五拾三次」の全作品一挙公開でしょう。「東海道五拾三次」はその人気の高さゆえ、繰り返し増版と複製製作が行われてきましたが、山種美術館で所蔵されているものは最初期の摺りの特徴を持つ図などが揃っており、圧倒的な希少性を誇ります。本展では、「東海道五拾三次」全56点が前半後半に分けて展示がされる予定なので、何度か足を運んで全点コンプリートするのもいいかもしれません。

ぜひこの機会に江戸の粋を山種美術館で感じてみてはいかがでしょうか。

 

【展覧会情報(公式HPより抜粋)】
このたび山種美術館では、開館55周年を記念して、所蔵の浮世絵と江戸絵画の優品をご紹介する展覧会を開催いたします。
当館の浮世絵コレクションには、鈴木春信から鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重まで、六大絵師の名品が多数含まれており、保存状態も良いことから、専門家の間で高く評価されています。本展では、写楽の個性的な役者大首絵3点、「赤富士」で名高い北斎の《冨嶽三十六景凱風快晴》、広重の保永堂版《東海道五拾三次》など、絵師の代表作が揃う珠玉のコレクションを前・後期に分けて全点公開します。
また、当館の江戸絵画コレクションは、創立者・山崎種二が、米問屋の小僧時代に江戸琳派の絵師・酒井抱一の作品を見たことをきっかけとして、美術品の蒐集を行うようになったことから、琳派の作品が充実しています。本展では、俵屋宗達絵・本阿弥光悦書による《四季草花下絵和歌短冊帖》や《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》、酒井抱一《秋草鶉図》【重要美術品】などの琳派作品をはじめ、岩佐又兵衛《官女観菊図》【重要文化財】から、国内外で注目される伊藤若冲、さらに池大雅などの文人画、狩野派や円山四条派まで、諸流派による個性豊かな優品の数々をご覧いただきます。
江戸時代の浮世絵や絵画は、時代や国境を超えて人々に愛されてきました。印象派に影響を与えた浮世絵や、装飾性が高く評価された琳派などの江戸絵画は、日本の文化を世界に広めた一端を担ってきました。世界に認められたその芸術性は、今も変わらぬ輝きを放っています。本展を通じて、当館秘蔵の浮世絵・江戸絵画の魅力をご堪能ください。

【基本情報】

会場 山種美術館

会期 2021/7/3(土)〜8/29(日)

公式サイト https://www.yamatane-museum.jp/exh/2021/ukiyoe.html

4,民藝の100年  2021/10/26(火)〜2022/2/13(日) 東京国立近代美術館

民藝の100年 チラシ

 

「民藝運動」は約100年前に起こった「より良い生活とは何か」を追求した工芸運動あり、柳宗悦を中心として河井寛次郎・浜田庄司によって提唱された一つの思想です。2021年は民藝運動を率いた柳宗悦の没後60年という節目年にちなみ、10月から東京国立近代美術館で「民藝の100年」が開催されます。本展は民藝の100年の歩みを通して今の生活やそれを取り巻くデザインを見直すような展覧会となるでしょう。

民藝運動が起こった1926年の工芸界は、華美な装飾を施した観賞用の作品が主流とされていました。そんな中、柳宗悦たちは「名も無き職人の手から生み出された日常中で使う生活の道具にこそ美術品に劣らぬ美しさがある」と唱え、それらを民藝=民衆的工芸と名づけました。この美術運動は新しい美の捉え方や価値観を提示したものであり、端的に言えば「美は生活の中にある」ということを説いた運動です。その運動は決して過去のものでなく、今日まで継承されている運動です。

本展はその100年にも及ぶ民藝の軌跡を見ることのできる展覧会です。民藝運動は物質的な豊かさだけでなく、より良い生活とは何かを民藝運動を通して追求した軌跡と言えるでしょう。民藝運動を知ることは、ものに溢れる今の時代、より良い生活を営むにはどうすればよいかの一つの答えを投げかけてくれるのではないかと感じます。

 

【展覧会情報(公式HPより抜粋)】
今、なぜ「民藝」に注目が集まっているのでしょうか。「暮らし」を豊かにデザインすることに人々の関心が向かっているからなのか。それとも、日本にまだ残されている地方色や伝統的な手仕事に対する興味からなのか。いずれにせよ、一世紀も前に柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎が、日常の生活道具の美しさに注目して考案した新しい美の概念が、今なお人々を触発し続けているのは驚くべきことです。
柳宗悦の没後60年に開催される本展覧会は、各地の民藝のコレクションから選りすぐった陶磁器、染織、木工、蓑、ざるなどの暮らしの道具類と大津絵をはじめとする民画に、雑誌、書籍、写真、映像などの同時代資料をふんだんに交え、総点数400点を超える作品・資料を通して、時代とともに変化し続けた民藝の軌跡を新しい視点から解き明かしていきます。民藝の100年の歴史の厚みを知ることで、これからの民藝の可能性が開けてくることを期待しています。

【基本情報】

会場 東京国立近代美術館

会期 2021/10/26(火)〜2022/2/13(日)

公式サイト https://mingei100.jp

5,ゴッホ展−響あう魂 へレーネとフィンセント−2021/9/18(土)〜12/12(日)東京都美術館

 

ヴィンセント・ファン・ゴッホ。おそらく彼は美術史上最も偉大な芸術家の一人として知られているでしょう。そんな彼の展覧会が2021年の秋、東京都美術館で開催されます。しかも本展は、これまで国内で何度も開催されてきたゴッホの展覧会とは違い、あるコレクターが収集したゴッホの作品がテーマになっているのです。

美術館の特別展にはルーヴル美術館など美術館の名を冠した展示、ピカソ展といったように画家に着目した展示、印象派展や20世紀のアート展のように時代や芸術運動で括った展示、そしてコレクターの作品が一堂に集められたコレクション展などがあります。サブタイトルにもあるように、本展はへレーネというコレクターが収集したゴッホの作品がテーマであり、へレーネとゴッホ、二人の軌跡を見る展覧会です。

ヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)は300をこえるゴッホの作品を収集し、一大コレクションを築き上げた個人収集家です。残念ながらへレーネがゴッホの作品と出会った時、彼はすでに故人となっていました。しかしその作品性に惹かれ、ゴッホの作品収集に生涯を捧げたことで知られています。今となってはゴッホの作品といえば破格の高値で取引されるものですが、へレーネのゴッホコレクションが評価されたのは、彼女の死後のことで、これは生前一枚しか絵が売れなかったゴッホの境遇と重なるものがあります。へレーネは愛も健康も幸せも全てを捨てて芸術、特にゴッホの作品に身を捧げました。本展を通して、へレーネを突き動かしたゴッホの魂とは如何なるものだったのかを体感いただけるのではないかと思います。

 

【展覧会情報(公式HPより抜粋)】
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の芸術に魅了され、その世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラー(1869-1939)。ヘレーネは、画家がまだ評価の途上にあった1908年からおよそ20年で、鉄鉱業と海運業で財をなした夫アントンとともに約90点の絵画と180点を超える素描・版画を収集しました。ファン・ゴッホの芸術に深い精神性を見出したヘレーネは、その感動を多くの人々と分かち合うべく、生涯にわたり美術館の設立に情熱を注ぎました。
本展では、からファン・ゴッホの絵画28点と素描20点を展示します。また、ミレー、ルノワール、スーラ、ルドン、モンドリアンらの絵画20点もあわせて展示し、ファン・ゴッホ作品を軸に近代絵画の展開をたどる、ヘレーネの類まれなコレクションをご紹介します。
さらに、ファン・ゴッホ美術館から《黄色い家(通り)》を含む4点を展示し、20世紀初頭からファン・ゴッホの人気と評価が飛躍的に高まっていく背景にも注目します。

【基本情報】

会場 東京都美術館

会期 2021/9/18(土)〜12/12(日)

公式サイト https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_vangogh.html

 

 

 

以上が2021年下半期 注目の美術展5選です。

この5選はIMS編集部の独断と偏見から制作したものであり、上掲の5つ以外にも注目すべき展覧会は数多く開催される予定となっております。本記事では東京の展覧会に絞ったものとなりますが、全国各地で注目すべき展覧会が開催予定なので気になる方はご自身で調べていただけると幸いです。

また、現在は緊急事態宣言下であるため、美術展の動向は全く読めず、いつ延期中止になってもおかしくない状況です。そのため、上述した期間や時間は変更する可能性もありますので実際に足を運ばれる際は事前に公式HPの情報をご確認いただければと思います。

 

【必見】2021年 注目の展覧会5選