
2025.06.04
【ルーヴル、オルセーだけじゃない‼︎】フランスを訪れたら絶対行きたい美術館 〜ギュスターヴ・モロー美術館で、幻想と夢想の世界に触れる〜
Contents
1. フランス・パリで体験する「個人美術館」の魅力

パリといえば、ルーヴルやオルセーといった巨大な国立美術館を思い浮かべる方が多いでしょう。圧倒的な規模と展示数は、まさに一見の価値あり。一生に一回は行きたい美術館です。
でも、「もっと静かに、もっと深く、美術と向き合いたい」と思っているなら――パリの“個人美術館”という選択肢もぜひ観光の一つに。
芸術家が実際に暮らし、創作した空間をそのまま活かした美術館では、作品だけでなく、その作家の人生や感性そのものに触れるような鑑賞体験が可能です。
今回ご紹介する「ギュスターヴ・モロー美術館」はそこまで大きい美術館ではありませんが、圧倒的にオススメしたい個人美術館のひとつ。
象徴主義を代表する画家モローの住まい兼アトリエが美術館となっており、当時の家具や雰囲気がそのまま残された空間で、幻想的な作品世界に浸ることができます。
実際にパリ在住の知人たちも、「モロー美術館は本当におすすめ」と口を揃えて絶賛する、知る人ぞ知る名スポット。有名美術館のような混雑も少なく、静かに作品と向き合えるのも大きな魅力。
せっかくパリに行くなら、特別な美術館体験を。
「ギュスターヴ・モロー美術館」は、パリ観光を一段と深く、豊かなものにしてくれる場所です。
2. ギュスターヴ・モローとは? ― 象徴主義の旗手


ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826–1898)は、19世紀フランスを代表する画家の一人。
華やかなパリの芸術界で活躍し、“象徴主義(シンボリズム)”という芸術運動を牽引したことで知られています。
象徴主義とは、目に見える現実をただ描くのではなく、夢、神話、宗教的な物語を通して「人間の心」や「精神の世界」を表現しようとする芸術。
わかりやすさよりも、深い意味や美しさ、想像力を大切にしました。
モローの作品には、ギリシャ神話の登場人物や聖書の場面がよく登場します。でもそれは、歴史を語るためではありません。
彼は「人間の理想」や「苦悩」、「崇高さ」や「永遠の美」を細部まで描き込まれた装飾的な表現や、一目で惹き込まれる神秘的な雰囲気で表現しました。
たとえば『オイディプスとスフィンクス』『出現』などの代表作には、まるで夢の中をさまようような幻想的な世界が広がっています。
細部まで描き込まれた衣装や背景、幻想的な色使い、表情を抑えた人物たち。
静かに、しかし強く訴えかけてくる絵画が、見る人の心をとらえて離しません。
またモローは教育者としても優れており、アンリ・マティスやジョルジュ・ルオーといった後の巨匠たちに多大な影響を与えました。
作品を通じて、また教育者としても、彼はのちに訪れる20世紀の美術に大きな足跡を残しました
3. モローの暮らした邸宅が美術館に

パリ9区の静かな通りにたたずむ「ギュスターヴ・モロー美術館」。
実はこの場所は、モロー自身が晩年まで暮らし、制作に没頭していた自宅兼アトリエでした。
画家として成功を収めたモローは、自らの芸術と人生を後世に伝えるため、「自宅そのものを美術館として残す」決断をします。
そこには絵画だけでなく、家具や装飾、暮らしの気配までが当時のまま保存され、モローが生きていた時代の雰囲気さえ感じることができます。
またこの邸宅は、芸術家の住まいであると同時に、若き才能たちが集い、対話と創作が交差する場でもありました。
特に、のちに独自の道を歩みながらも20世紀美術に確かな影響を与えた画家ジョルジュ・ルオーは、この邸宅に頻繁に訪れ、モローのもとで多くを学びました。
モローとルオーとの関係は深く、ルオーはモロー美術館の設立に協力したことも知られています。
ギュスターヴ・モロー美術館を訪れるということは、ただ作品を鑑賞するのではなく、
モローが生き、考え、描き、仲間と語り合った空間そのものに身を置くという体験といえます。
パリには数多くの美術館がありますが、芸術家の暮らしと創作の現場をここまでリアルに感じられる場所は、美術大国フランスといえどそこまで多くはありません。
4. 見どころ ― モローの生きた時代の空気を残す美術館


ギュスターヴ・モロー美術館の最大の魅力は、ただ作品を観る以上の体験ができることです。
この場所を訪れると、確かに画家モローがそこにいたというような空気に包まれます。
所狭しと展示されている作品数々に、静かに時を刻む家具や道具。ここは単なる展示空間ではなく、モローが実際に生き、考え、創作していた“その現場”であったことを強く感じます。
展示されているのは、モロー自身が手がけた絵画、デッサン、スケッチ、版画の数々。
完成作に加え、構図のラフ、未完成の下絵なども豊富にあり、彼の思考のプロセスをリアルに感じ取ることができます。
特に、同じテーマを何度も描き直したスケッチなどからは、一つの作品に込めた執念や理想の高さが伝わってきます。
そして何より印象的なのが、展示空間の多くが“当時のまま”に残されていること。
モローが使っていたパレットや筆、スケッチブック、アトリエ、寝室の家具――それらがすべて、彼が日々触れていた実物として今もそこにあります。
作品と空間が一体となって、画家の人生そのものを語ってくれる――そんな稀有な美術館です。
また建物自体も非常に魅力で展示室の中にあるらせん階段は大きな魅力の一つ。
その存在自体が空間の装飾となり、展示と建築が一体化したような独特の雰囲気をつくり出しています。
5. 行き方・基本情報

場所:パリ9区(周辺観光名所:オペラ座)
最寄駅:Trinité – d’Estienne d’Orves(メトロ12番線)徒歩約5分
開館時間:10:00~18:00(火曜休館)
入場料:大人 7€
公式サイト:https://www.musee-moreau.fr
6. まとめ ― 芸術家の息づかいが残る、特別な美術館へ
パリに行ったらルーヴルやオルセーを訪れる。
それはもちろん、フランスを代表する芸術に触れる素晴らしい体験です。
けれど、もし“もう一歩、深く美術と向き合いたい”と思うなら――個人美術館もパリを満喫する選択肢のひとつ。
なかでも「ギュスターヴ・モロー美術館」は、その魅力をまさに体現する特別な場所です。
モローが実際に暮らし、描き、教え、そして自らの手で未来へ託した空間。
そこには、彼の精神や美意識が、今も静かに息づいています。
これはパリでしか出会えない、唯一無二の体験です。
ただの「作品鑑賞」にとどまらず、芸術家の思考にじかに触れるような感覚。
ギュスターヴ・モロー美術館には、感性を揺さぶる“一つ上の美術体験”が待っています。