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2024.12.10

【ゴーギャン、ムンク、ダリまで…】クリスマスの名画7選

今回は「クリスマスの名画」7選です。今や世界的な風物詩となったクリスマスですが、意外にもモチーフにした絵画はあまり多くありません。

それもそのはず、クリスマスが現代のようなイベントとしての性格を持ち始めたのは19世紀以降のことであり、それ以前は何か特別な祝い事とする認識自体がヨーロッパにもありませんでした。しかし19世紀以降、家族がクリスマスを祝う場面や、季節感を感じさせる風景が多く描かれるようになり、著名な画家たちもモチーフとするようになっていったのです。本稿では、クリスマスをテーマにした代表的作品を紹介して参ります。

1. カール・ラーション『家族のクリスマス』(1895年頃)

スウェーデンの画家カール・ラーションは、家族の暖かい日常を数多く手掛けています。
この作品ではクリスマスの団欒を楽しむ家族の様子が描かれており、子どもたちが暖炉のそばに集まって子どもたちが飾り付けをする姿は、見ている側を家庭的で幸福な気分にしてくれるでしょう。これぞ王道のクリスマスと思う方も多いのではないでしょうか。

2. ノーマン・ロックウェル『クリスマスの帰省』(1948年)

アメリカの画家・イラストレータのノーマン・ロックウェルは、差別批判などの強い社会的メッセージを込めた作品と、家族や地域社会の絆をテーマにした作品で有名です。
この絵は1935年12月21日発行のサタデー・イブニング・ポストの表紙イラストとして制作され、サンタクロースが子どもたちからのプレゼントのリクエストの手紙に目を通す様子がコミカルに描かれています。すでにこの頃には現代に通じるサンタクロースのイメージが確立され、イブの夜に子どもたちがプレゼントをもらうという文化が定着していることがよくわかります。
ロックウェルの作品には、アメリカンカントリーを舞台にしながらも現代に通じるクリスマスの楽しさと懐かしさが表れているため、現在もアメリカの国民的画家として高い人気を誇ります。 

3. ポール・ゴーギャン『タヒチのクリスマス』(1896年)

ポスト印象派の巨匠ゴーギャンは南太平洋のタヒチで過ごした際、クリスマスに関する絵画を描いています。しかしながら彼のスタイルは伝統的な宗教画とは異なり、現地の文化や風習を融合させたものです。そのためこの絵を見てクリスマスの絵だとわかる方はほとんどいないのではないでしょうか。もしくはタイトルを何かの間違いだと思われるかもしれません。確かに我々の知るクリスマスの要素は絵の中から見つけにくく、広告などのイメージ画像に引用はしにくいでしょう。しかしタヒチの人々の集会や祝いの風景を通じてクリスマスの神聖さと自然の豊かさを描いていた本作は、全盛期に至ったゴーギャンの表現や、当時のタヒチの文化、当時ヨーロッパでクリスマスがイベントとなりつつあった事実と、そしてゴーギャンの故郷への慕情も感じられる貴重な作品です。

4. アルバート・シュヴァリエ・テイラー『雪の中の教会』(1933年)

イギリスの画家アルバート・シュヴァリエ・テイラーは、イングランドのコーンウォールペンザンスに近い漁村、ニューリンで活動した「ニューリン派」のメンバーとして知られます。しかしキャリア後半ではロンドンに移り、都会的な生活をする人々を描くことで上流階級の人々から人気を博しました。

この作品では、ロウソクの灯りに照らされたクリスマスツリーを囲む家族の様子が描かれています。柔らかな光の表現がクリスマスの喜びと家族の幸福な雰囲気を表現しており、「クリスマスは家族で過ごすもの」というイメージを当時のイギリスに広める一助となりました。

5. エドヴァルド・ムンク『売春宿のクリスマス』(1903–04

ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクは、精神疾患との葛藤を抱えながらも『叫び』など世界的な名画を生み出した世紀末芸術の巨匠です。

売春宿のクリスマス風景を描くという何とも異色の作品ですが、ムンクは制作モチーフとして度々売春宿を用いていました。本作にはトラブル相手のマックス・リンデ想定した上流階級やムンク自身の出身である敬虔な家庭への解釈・皮肉が込められていると考えられます。

クリスマスの絵画として用いるには際どいモチーフの本作ですが、当時の売春宿など決して裕福でない階層の人々にもクリスマスを楽しむ習慣が普及していたことを知る上では面白いのではないでしょうか。

6. サルバドール・ダリ「アメリカのクリスマスの寓意」

サルバドール・ダリの作品「アメリカのクリスマスの寓意」(1934年)は、クリスマスをテーマにしたシュルレアリスムの解釈であり、象徴性と社会・政治的なコメントが織り交ぜられています。作品の中心には卵が描かれ、誕生や再生を象徴するとともに、アメリカ大陸全体を表現しています。卵は二分されており、北アメリカは動的で革新的な部分として描かれ、飛行機が通過する黒い穴が特徴的です。一方、南アメリカはより堅実で伝統的なイメージとして表現されています。

このシーンを囲むのは暗い雲と前景に浮かぶ謎めいた女性のシルエットであり、切望や変容といったテーマを暗示しています。ダリの作品によく見られる卵のモチーフは、再生や起源への関心を反映しており、「ナルキッソスの変容」といった他の作品にも共通する要素です。

この絵画は、アメリカに対するダリの印象を反映しており、若々しく活力に満ちた国として描かれています。また、故郷スペインのような過去の過ちを回避できる可能性を持つ国としての期待が込められています。ダリが後にアメリカで名声を得て、広く受け入れられるようになる前触れとして、この作品は彼の特別な視点を示しています。

とは言え、ダリを詳しく知らない人にとっては「何のこっちゃ?」でしょう。

クリスマスらしくないクリスマスの絵画として覚えておいてもいいのではないでしょうか。

 

7. ヴィゴ・ヨハンスン「きよしこの夜」

詳しくは以下を参照。

【今日の一枚】ヴィゴ・ヨハンスン ”きよしこの夜”