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2023.07.31

知っておきたいアメリカを代表する39人の芸術家

今回は知っておきたいアメリカを代表する39人の芸術家と題しまして、世界やアメリカの芸術の歴史に影響を与えたアメリカの芸術家をご紹介して参ります。
芸術の国と聞いておそらく多くの方は「フランス」や「イタリア」を思い浮かべる方がほとんどでしょう。確かに国が成立してから230年ほどしか経っていないため、芸術の歴史はそれほど長くはありません。しかし近代以降、特に1945年以降の芸術における発展は凄まじく、20世紀後半にアメリカの芸術家たちが世界に与えた影響は計り知れません。
アメリカは多様な文化と人種が共存する国であり、その多様性が芸術家たちの創造性に大いに寄与してきました。今回ご紹介させていただく39人の芸術家たちは、様々な芸術運動やスタイルを通じてアメリカの芸術史に重要な足跡を刻んできた人物たちです。彼らの作品は、単なる美の表現を超え社会や文化、個人の内面を映し出す重要なメッセージを伝えています。本記事ではそんな現在のアートの中心地となっているアメリカの著名な芸術家たちを一挙ご紹介してまいります。

Contents

ベンジャミン・ウェスト(Benjamin West)1738-1820

18世紀に活躍したアメリカ出身の画家。初期アメリカ絵画の発展に貢献した人物と言われている。主に歴史画や肖像画を得意とし、非常にリアルでかつドラマチックな作風を特徴とした。ウェストはロンドンの(イギリスにおいて最も格式高い美術組織)ロイヤルアカデミー・オブ・アーツを創設し、2代目の会長を務めた。後進の芸術家たちを育成する重要な役割を果たし、若手画家にとっても影響力のある人物だったと言われている。ウェストの活躍により、アメリカ美術が欧州の美術界においても認知されるようになり、アメリカ出身の芸術家が国際的な評価を受けるきっかけとなった。

【代表作】

 

ジョン・シングルトン・コプリー (John Singleton Copley) 1738 – 1815

18世紀に活躍したボストン生まれの画家。独立前のアメリカ出身の画家として、初めて国際的な評価を受けた画家の一人として知られる。
肖像画と得意とし、アメリカで成功したのちイギリスでも活躍し王立美術アカデミーの会員にも選出された。コプリーの肖像画は、精緻なディテールと人物の生き生きとした表現で知られており、その才能と画風はアメリカとイギリスの芸術の橋渡しとなった。

【代表作】

トマス・コール (Thomas Cole) 1801 – 1848

19世紀のアメリカの画家。アメリカのロマン主義美術の創始者的存在として知られている。これはヨーロッパで流行していたロマン主義に倣ったムーブメントだったが、国家の発展やアメリカらしさの発見、国家のアイデンティティーの確立、急激に高まる理想主義そしてロマン主義への情熱などが重なり、アメリカのロマン主義の画家たちはそれらを体現する作品を多く制作した。コールはその中でも主導的立場にあり、アメリカの自然の荘厳さと荒涼さを表現した壮大な山々、草原、滝、川などの風景を多く描いた。彼の作品はアメリカ美術史において重要な人物であることが知られ、アメリカの風景画家や自然主義の画家に多大な影響を与えた。

【代表作】

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー (James Abbott McNeill Whistler) 1834 – 1903

アメリカの19世紀後半の画家、版画家。主にロンドンで活動し、国籍はイギリスとなっている。作品にはジャポニスムや印象派の影響が色濃く現れており、その視点から独自の作品を制作した。風景画と肖像画において独自のスタイルと抽象的な表現を特徴とし、ヨーロッパのみならずアメリカにも影響を与えたとされている。

【代表作】

ウィンスロー・ホーマー (Winslow Homer) 1836 – 1910

19世紀のアメリカを代表する画家。アメリカ写実主義の旗手の一人として知られる。ホーマーはアメリカの自然と人々の生活を描写し、特に海や漁師の日常をテーマにした作品を多く描いた。リアリズムと印象主義の要素を組み合わせた独自のスタイルで描き、自然の力強さや人間の感情を感じさせる作品が高く評価されている。ホーマーの作品の多くはアメリカの自然や人々の生活を捉えた作品であり、19世紀アメリカのアイデンティティを象徴する作家としてアメリカ芸術史において重要な人物となっている。

【代表作】

メアリー・カサット (Mary Cassatt) 1844 – 1926

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した女流画家。彼女の作品は印象派のスタイルで知られ、主に母子像や女性の日常生活を描いた。フィラデルフィアで生まれ、その後に渡りパリで美術を学び、印象派の芸術家たちと交流した。以降印象派の特徴である色彩や光の効果を巧みに取り入れ、自然な姿勢や瞬間の表情を描写することに成功した。印象派の評価が上がると共に彼女への評価が高まり、重要な女性画家として認識され、アメリカとヨーロッパの美術界で高い評価を受けた。

【代表作】

トマス・エイキンズ (Thomas Eakins) 1844 – 1916

19-20世紀のアメリカの画家。リアリズムを追求した人物として知られる。エイキンズはフィラデルフィアの美術学校で学んだ後、ヨーロッパに渡ってフランスやスペインで研鑽を積み、その後アメリカで活躍した。肖像画や風景画、スポーツのシーンを主題とし、リアリズムの手法を駆使してリアルで力強い作品を制作した。人体の構造や動きを詳細に研究し、解剖学的な正確さを持った人物画を描くことでも有名。彼はそのリアリズムの手法によってアメリカ文化やアイデンティティを描き、アメリカンアートにおける独自性を強調する重要な役割を果たた。

【代表作】

ジョン・マリン (John Marin) 1870 – 1953

20世紀前半のアメリカのモダニズムを代表する画家。特にウォーターカラーやエッチングで描かれた都市の風景や海の風景などを抽象的で表現豊かなスタイルで描いた作品が広く知られている。色彩と光の効果を強調し、形態や動きを独自の手法で捉えることが特徴。このジョン・マリンの作品はアメリカの近代美術運動のアメリカン・モダニズムにおいて重要な役割を果たし、特に抽象表現主義の先駆者の一人とされている。

【代表作】

エドワード・ホッパー (Edward Hopper) 1882 – 1967

20世紀のアメリカの画家で、アメリカン・リアリズムの代表的な芸術家。都市の風景や建物、人物を描写し、特に寂寥感や孤独感を強調した独特の雰囲気が特徴。彼は孤独や都市の無機質さを描写し、現代社会の孤独や人間関係の複雑さを投影しているとして広く評価されている。彼の抒情豊かな作品は、抽象的な要素と結びつき、抽象表現主義などの現代美術運動にも影響を与えたと言われている。

【代表作】

 

ジョージ・ベロウズ (George Bellows) 1882 – 1925

20世紀初頭のアメリカの画家。都会の下町や労働者階級の人々の生活を写実的に描く「アシュカン派」の代表的な画家の一人である。アシュカン派の画家たちはニューヨーク市のアート界で活動し、都市の活気ある一面と同時に(下層)市民が抱える問題点を描いた。ベロウズは主に都市の風景やアメリカの日常生活を描き、生き生きとした色彩や力強い筆致が特徴。リアルでありながらも情熱的で感情豊かな作品は今なお多くの人から愛されている。

【代表作】

特に有名な作品には、ボクシングの試合を描いた「スタッグ・アット・シャープスバーグ」や、ニューヨークの都市風景を描いた「ニューヨーク」などがあります。

ジョージア・オキーフ (Georgia O’Keeffe) 1887 – 1986

20世紀アメリカの女流画家であり、アメリカのモダニズムにおける最重要人物。オキーフはアメリカにおいてまだ前衛芸術がほとんど知られていなかった時期に、花や風景の作品に抽象的な要素を描き、自然の本質や感情を表現した。このようなアプローチは当時の美術界に新鮮な視点をもたらし、アメリカにおけるモダニズムの発展に寄与した。その功績の大きさから「アメリカモダニズムの母」と呼ばれている

 

【代表作】

グラント・ウッド (Grant Wood) 1891 – 1942

20世紀のアメリカの画家で、アメリカの地方主義運動を代表する芸術家の一人。ウッドはアメリカの田舎の風景や農村生活を主題として、アメリカの地方文化を象徴する作品を数多く描いた。リアルな描写と同時に抽象的な独自のスタイルやシンボリズムを含んでいるのが特徴。特に彼の名作「アメリカン・ゴシック」は、世界的に知られており、アメリカの芸術史における象徴的な作品として位置づけられている。

【代表作】

代表作に、「アメリカン・ゴシック」(’30年)、「革命の娘たち」(’32年)などがある。

ルイーズ・ネヴェルソン (Louise Nevelson) 1899 – 1988

20世紀のアメリカの女流彫刻家。1899年にウクライナで生まれ、1905年にアメリカに移住し、その後はアメリカで暮らした。さまざまな木片を作品の要素として組み合わせていくアッサンブラージュ手法によって制作された抽象的な作品を多く生み出している。彼女の作品は黒や白などの単色のもの、特に黒一色の作品が多く、「黒の女王」と言われている。彼女の芸術は、個人的な経験や内面の感情に基づいており、自己表現や自己探求をテーマにしている。精神的な深みと哲学的な側面を持っており、彼女はアメリカの美術史において抽象表現主義の重要な彫刻家として評価されている。

【代表作】

マーク・ロスコ (Mark Rothko) 1903 – 1970

20世紀のアメリカの画家であり、抽象表現主義の代表的な芸術家の一人。1903年にロシアのダウガウピルスで生まれ、1913年にアメリカに移住し、その後アメリカ国籍を取得した。カラーフィールド・ペインティングと呼ばれる大きなキャンバスを単色で塗りつぶす手法を駆使した抽象作品が広く知られている。ロスコは芸術を通して、自身の内面や感情、人間の存在について深い探求を行い、哲学的で宗教的な雰囲気が作品に宿っている。今なお世界的に有名な画家であり、彼の作品は芸術的遺産として愛されている。

【代表作】

イサム・ノグチ (Isamu Noguchi) 1904 – 1988

20世紀のアメリカの彫刻家。母親はアメリカ人で、父親は日本の作家の野口米次郎。彼の作品は抽象的でありながら、自然の力や人間の形態を反映し、モダンと日本の美意識が融合した独自のスタイルを持っていることで知られる。着手した作品は抽象的な石の彫刻からランプや家具のデザイン、公共の彫刻や庭園の設計にまで及んだ。イサム・ノグチは世界的にも知られた芸術家であり、日本とアメリカの文化的架け橋としても活躍。芸術のみならずデザインの分野にも大きな影響を与えた人物としても知られている。

【代表作】

 

ウィレム・デ・クーニング (Willem de Kooning) 1904 – 1997

20世紀を代表するオランダ生まれのアメリカの画家。抽象表現主義の代表的な人物として知られている。荒々しい筆触と強い色彩、抽象的な形状の重なりなどが特徴で、感情的な表現や内面の探求を追求した。デ・クーニングの作品は情熱的で力強いエネルギーが宿り、個人の経験や感情を表現しているとされている。彼は世界的にも非常に広く知られた存在であり、2023年現在、デ・クーニング作「インターチェンジ」は世界で2番目に高値で取引された絵画となっている(1位はレオナルド・ダ・ヴィンチ「サルバトール・ムンディ」)。彼はアメリカのみならず芸術史においても重要な位置を占める芸術家であり、抽象表現主義の発展に大きく貢献した。

【代表作】

バーネット・ニューマン (Barnett Newman) 1905 – 1970

20世紀半ばに活躍したアメリカの画家。抽象表現主義の代表的な人物として知られている。特に「カラーフィールド・ペインティング」の画家として有名。ニューマンは芸術と哲学に強い関心を抱き、数少ない色彩と滲むような形状を通じて感情や内面の探求を表現し、鑑賞者に精神的な体験を呼び起こすことを意図している。ニューマンはポロックやデ・クーニング、ロスコと並び抽象表現主義の代表的な人物として広く知られており、特にカラーフィールド・ペインティングの発展に大きく貢献しました。

【代表作】

彼の代表作には「Who’s Afraid of Red, Yellow and Blue?(赤、黄、青に恐れる者は誰か)」や「Vir Heroicus Sublimis(高貴な英雄的な人物)」などがある。

ルイーズ・ブルジョワ (Louise Bourgeois) 1911 – 2010

20世紀から21世紀初頭にかけて活躍したフランス生まれのアメリカの女流芸術家。特に「Maman(ママン)」という巨大なクモの彫刻は世界的にも広く知られている。個人の経験や感情を芸術作品に投影するスタイルが特徴で、そこには家族関係、性的なアイデンティティ、人間の存在の複雑さが抽象的かつ象徴的に表現されている。彼女は多様な表現手法や独創的なアプローチを数多く行い、強烈でありながらも情緒的な深みを持った作品を数多く制作した。まさしく現代を代表する芸術家の一人であり、その影響は今なお大きい。

【代表作】

ジャクソン・ポロック (Jackson Pollock) 1912 – 1956

20世紀のアメリカを代表する画家の一人であり、芸術史を塗り替えるほどの影響を与えた人物。抽象表現主義運動の最も著名な芸術家としても知られる。ポロックといえばキャンバスの前で絵の具を滴らせ、垂らしたり、投げつけたりするなどの一切の伝統を排したアクション・ペインティングという手法を使って制作した作品が特徴。これはこれまでの芸術にはなかった描き方であり、キャンバスと絵の具の間に新たな関係を感じさせ、新たな視点を持ち込んだ。ポロックの作品は、彼の心理的状態や感情、人間の存在に対する探求が反映されていると考えられている。特に「Number 1A」(1948)や「Autumn Rhythm」は、アクション・ペインティングの最高傑作として評価され、現代美術の重要な傑作と言われている。

【代表作】

 

アンドリュー・ワイエス (Andrew Wyeth) 1917 – 2009

20世紀に活躍したアメリカの画家で、リアリズムとマジックリアリズムの要素を組み合わせた作品を多く制作した。ワイエスは主に田舎の風景や農村の人々を描き、繊細で緻密な描写を得意とした。彼は精巧な技術で細部まで描写し、自然や人物を抒情豊かに表現した。彼が活動した時代は目まぐるしく芸術のスタイルが変わる時代であり、多くの画家が自身のスタイルを求めてさまざまな表現を行ったが、ワイエスは自身のリアリズムをひたすらに追求しやがて「魔術的」と評される位置にまで到達したことで知られる。

【代表作】

【今日の一枚】アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」

ロイ・リキテンスタイン (Roy Lichtenstein) 1923 – 1997

アメリカンポップアートの重要な芸術家。コミックや広告、新聞の見出しなどの大衆文化から着想を得た作品を多く作ったことで知られている。中でもベン・デイ・ドット(ドット絵)と呼ばれる点描のスタイルが特徴的で、これにより日常生活の対象を抽象化し、大きなドットパターンを使用して再現しました。リキテンスタインは有名なアメリカンアイコンを取り上げ、その表面的なイメージを強調しながらも、同時にその対象の意味を問い直すというアプローチを取りました。ポップアートの先駆者として後世に大きな影響を与えた。

【代表作】

 

ロバート・ラウシェンバーグ (Robert Rauschenberg) 1925 – 2008

現代美術において大きな影響を与えた20世紀の芸術家。ラウシェンバーグの作品は抽象表現主義とポップアートの要素を組み合わせ、革新的なアプローチで知られている。特に「コンバイン」と呼ばれるスタイルが有名。コンバインとは、絵画と彫刻の要素を組み合わせた作品であり、キャンバスに布や新聞紙、写真、家具、アーティファクトなどを組み込んだもの。これにより、平面的な絵画表現と立体的な要素を融合させて、新しい芸術的な可能性を追求した。これらを日常生活や社会的なテーマを取り入れつつ、独自の視覚的なアプローチで再構築した。

【代表作】

アンディ・ウォーホル (Andy Warhol) 1928 – 1987

アメリカが誇る世界で最も知られている芸術家。ウォーホルはアメリカンポップアートの中心人物として広く知られている。ウォーホルは大衆文化と芸術を融合させることで、社会的なテーマ性や消費文化の本質を作品から問うようなアプローチを行った。ウォーホルは自身のスタジオ「ファクトリー」を通して多くのアーティストや俳優、ミュージシャンたちと交流し、アートシーンに革命をもたらした。それまでのアートの枠組みを破壊し、新たな価値観を作り出した、芸術の歴史に最も影響を与えた芸術家とも評されている。

【代表作】

ドナルド・ジャッド (Donald Judd) 1928 – 1994

1960-70年代に隆盛したミニマリズムの中心的な人物の一人。ジャッドは、アートをより純粋で客観的な形態に追求することを目指し、シンプルな形状や幾何学的なパターンを使用した彫刻やインスタレーションを制作した。作品には鉄やアルミニウム、アクリルガラスといった産業的な素材を使用され、空間との相互作用や物体の物理的特性を探求した。制作した「モノ」だけではなく素材や空間さえも表現の一部にしてしまうような先駆的なアプローチを行ったとして今なお高く評価されている。

【代表作】

 

ソル・ルウィット(Sol LeWitt) 1928- 2007

アメリカの現代美術家であり、コンセプチュアルアートの代表的な芸術家に位置付けられている。ルウィットの作品はシンプルで幾何学的な形状やパターンを特徴としており、壁に描かれる壁画や立体的な作品の制作を行った。彼の功績で特筆すべき点は「芸術作品の制作を具体的な指示書や指針に基づいて行うことができる表現方法を確立したこと」にある。この手法により芸術家本人が制作を行わなくても、指示に基づいて他の人が作品を制作できることを示した。このアプローチは芸術の創造性と意義が「作品そのもの」よりも指示書のような「アイデア」に集中させることを可能にし、この考え方はコンセプチュアルアートの源流となった。そのためルウィットは以降の芸術表現に重要な発展をもたらしたと考えられている。

【代表作】

サイ・トゥンブリー (Cy Twombly) 1928 – 2011

20世紀を代表するアメリカの現代美術家。トゥオンブリーの作品は独自のスタイルで描かれ、伝統的な絵画やドローイングの枠を超えた新しいアプローチから制作を行った。大胆な筆使いと線の描写が特徴で、作品に文字や数字、詩の断片などの言葉や記号を独自の抽象的な形態で取り入れることで知られている。トゥオンブリーの作品は感情、歴史、神話や文学などのテーマに基づいており、詩的で哲学的な要素を含んでいる。異なるいくつもの芸術形式を組み合わせた独自の作品によって新しい可能性を示した。

【代表作】

【今日の一枚】描画された詩 サイ・トゥオンブリー作「レダと白鳥」 

ジャスパー・ジョーンズ (Jasper Johns) 1930 –

20世紀のアメリカの現代美術家。アメリカの旗の作品で広く知られ、日常的な対象をテーマにした作品を数多く制作したことで有名。また絵画の表面に厚みのあるテクスチャーや立体的な要素を使うなど、革新的な技法を取り入れた。ジョーンズの作品は、芸術と日常の対象との関係、象徴主義、アイデンティティ、言語とコミュニケーションなどについて考察する重要なテーマを含んでおり、現代美術の発展に大きな影響を与えた。

 

【代表作】

ジョンズの代表作の一つには「アメリカの国旗(Flag)」があります。この作品はアメリカの国旗をリアルに描写し、アートの対象にしていますが、同時に抽象的な要素も取り入れています。

ロバート・モリス (Robert Morris) 1931 – 2018

20世紀アメリカの現代美術家。モリスは1960年代のミニマリズムの代表的な芸術家の一人。モリスは抽象的な形態や幾何学的な要素を使った彫刻やインスタレーションを制作し、ひときわ注目を集めたことで知られている。モリスはパフォーマンスアートにも取り組み、身体の動きや空間表現によって芸術と身体性の融合を試みたものとして高く評価されている。実験的なアプローチと積極的な探求心が多く影響を与えたとされている。

【代表作】

彼の代表作の一つには、大型の箱状の作品やL字型のスチールプレートなど、硬質な素材を用いた彫刻作品があります。これらの作品は、シンプルで無機質な形状を持ちながら、その存在感や空間との関係によって強い影響を与えました。

フランク・ステラ (Frank Stella) 1936 –

20世紀に活躍したアメリカの芸術家。ステラは抽象表現主義やミニマリズムに分類され、戦後アメリカにおける代表的な芸術家として知られている。ステラの作品は幾何学的なバターンや鮮やかな色彩が特徴。ステラの初期の作品が特に有名で、幾何学的パターンの線と色をフラットなキャンバスに描いた絵は従来の絵画の枠を超えた形状だったため「絵画の彫刻」と言われた。やがてその表現は立体作品に向かい、あらゆる形で自身の表現を追求した。

【代表作】

エヴァ・ヘス (Eva Hesse) 1936 – 1970

ドイツ生まれのアメリカの現代美術家。ミニマリズムやポストミニマリズムの重要な芸術家として広く知られている。ヘスの作品は柔らかい素材や繊細なフォルムを用いた彫刻作品が特徴的で、ゴムや布、プラスチック、ファイバーグラスといったこれまで彫刻にあまり使われることのなかった素材を用いて制作を行った。ヘスの作品には自然の変化や身体的な経験などといったテーマが込められており、繊細な素材の特性を活かして不安定さや儚さが表現された。

【代表作】

ロバート・スミッソン (Robert Smithson) 1938 – 1973

20世紀に活躍した芸術家。ランドアートの代表的な芸術家の一人。ランドアートとは自然環境や風景を芸術の媒体として、大規模な屋外インスタレーションや彫刻を創造する芸術表現のことを指す。スミッソンは、自然と人工物の関係を探求し、自然環境や地形をアートの媒体として活用した。土地や風景そのものを芸術作品と見なし、風景の一部を再構築したり自然の中に彫刻を配置した。抽象的でコンセプチュアルな要素を多く含んでおり、風景や地球の歴史を芸術として再構築することで、芸術と自然の間の繋がりを問い直した。

【代表作】

代表作の一つである「スパイラル・ジェッティ」は、1970年にユタ州のギャレーリー湖に作られた地球芸術の傑作です。スパイラル状の岩を使って湖の中に約1,500フィートもの長い螺旋状の埠頭を作り上げました。この作品は湖の水位の変化によって時折浮かび上がることもあり、自然との相互作用を体現しています。

ジョセフ・コスース(Joseph Kosuth )1945 –

アメリカのコンセプチュアルアーティストであり、20世紀後半の重要な芸術家の一人。コスースはアートの概念やアイデアに重点を置き、物質的な表現よりも言語や思考のプロセスに焦点を当てた作品を数多く制作したことで知られている。作品の多くにはテキストや写真、ビデオなどが使われている。芸術作品の本質や意味、芸術の制度についての在り方を問うような深い哲学的探求を行った。言語と視覚的な表現の複雑な結びつきをテーマにしたコスースの作品はコンセプチュアルアートの中でもひときわ高く評価されている。

【代表作】

マリーナ・アブラモヴィッチ (Marina Abramović) 1946 –

セルビア出身でアメリカを中心に活躍する現代芸術家。過激なパフォーマンスアートで広く知られている。アブラモヴィッチは自身の身体を芸術の媒体として、身体的な限界を試すことで芸術と現実の間の境界を模索することに焦点を当てた作品を多く制作している。暴力的で痛みを伴う彼女の表現は、芸術と身体の融合、時間の経過、観客とアーティストの相互作用についての問いかけを含み、鮮烈な印象を与えた。1997年のヴェネツィア・ビエンナーレでは金獅子賞(最高賞)を受賞するなど世界的に知られた芸術家であり、「パフォーマンス・アートのグランドマザー」とも評される。

【代表作】

ロバート・ゴーバー(Robert Gober) 1954 –

現代を代表するアメリカの芸術家であり、彫刻家。1980年代から1990年代にかけて脚光を浴び、世界的に活躍する芸術家となった。ゴーバーは現実的な日常的なオブジェクトやシチュエーションを用いて、不安や無意識といったテーマに対する鑑賞者の感情や思考を喚起している。日常の対象に不自然なモチーフを置くことで生まれる違和感は、日常への再考を促し、新たな解釈や洞察を提供していると高く評価を受けている。彼の作品は社会的とも強く結びついており、ジェンダーや宗教、セクシュアリティなどに関するテーマが頻繁に現れている。ポストモダンアートの代表的な一つとされ、アメリカの現代アートシーンにおいて重要な存在として認知されている。

【代表作】

シンディ・シャーマン (Cindy Sherman) 1954 –

アメリカの写真家で、コンセプチュアルポートレートの作品で広く知られている人物。シャーマンは自分自身をモデルとし、様々な役柄やキャラクターに変身した姿を写真に収めた。これらの作品は様々な社会的・文化的ステレオタイプやジェンダーの役割についての考察を含み、自己表現やアイデンティティを探求したものとなっている。シャーマンは映画や広告、美術館の収蔵品などのスタイルやイメージを模倣したり、風刺したりすることによってわれわれが視覚文化やメディアが作り出す意識や価値観にどのような影響を与えるかを問いかけ作品を制作した。自己撮影の写真を通じて多くの社会的な問題や個人的な探求を掘り下げていることから、シャーマンの芸術的なアプローチは現代芸術の中で高く評価されている。

【代表作】

ジェフ・クーンズ (Jeff Koons) 1955 –

現在も世界的に活躍しているアメリカの現代芸術家。ポップアートやコンセプチュアルアートの要素を取り入れ、大衆文化や消費社会のアイコンをモチーフにした作品が広く知られている。身近なモチーフを使って大胆なアプローチすることで知られる。バルーンの動物をブロンズで模った彫刻が有名。芸術と大衆文化を融合させたクーンズの作品は一般的にポップアートと結びつけられているが、単に大衆文化のアイコンを再現するだけでなく、それらを変容させ、鑑賞者に新たな視点を提供するものとして高い評価を集めている。

【代表作】

フェリックス・ゴンザレス=トレス (Felix Gonzalez-Torres) 1957 – 1996

キューバ生まれのアメリカの芸術家。ゴンザレス=トレスはミニマルアートやコンセプチュアルアートの正当な後継者であり、様々なメディアを通じて個人的な経験や社会的なテーマを探求する作品を数多く制作した。作品にはアイデンティティや愛、喪失、エイズといったテーマへの探求が見られ、芸術と人間の存在に対する哲学的な問いかけを含んでいる。また社会的な問題や政治的なメッセージを巧みにアートに織り交ぜるスタイルが特徴的。鑑賞者が参加して完成する作品「無題(今日のアメリカ)」は世界的に知られたコンセプチュアルアートの傑作であり、アートの枠組みを拡張し、観客との関係性を重視したことで高い評価を受けている。ゴンザレス=トレスは観客とのインタラクション、感情的な表現、個人と社会の関係の探求を融合し、現代美術の新しい領域を開拓した。

【代表作】

【今日の一枚】フェリックス・ゴンザレス=トレス『無題 (今日のアメリカ)』

キース・ヘリング (Keith Haring) 1958 – 1990

世界的に知られたアメリカの美術家であり、1980年代に活躍したポップアートの代表的な芸術家。シンプルな線で描かれたシルエットのアイコンは現代でもキース特有のものとして人気がある。彼はニューヨークの地下鉄や公共の壁面に自らのキャラクターやシンプルなシルエットを描くことからアートの活動を始め、その特徴的なスタイルはポップアートの要素とグラフィックデザインを巧みに融合させたものとして高い評価を受け、広く認知されるようになった。作品には社会的なメッセージや政治的な問題が表現されることが多く、エイズの啓発活動や反差別のテーマを取り入れている。キースの作品は1980年代のアートシーンを象徴するものとして今なお愛されている。

【代表作】

ジャン・ミシェル・バスキア (Jean-Michel Basquiat) 1960 – 1988

20世紀後半に活躍したアメリカを代表する芸術家。激しい筆致と力強いイメージを特徴とする作品は強烈なエネルギーを感じさせネオ・エキスプレッショニズムの先駆的な芸術家として知られている。1980年代のニューヨークで活躍し、ストリートアートの要素を絵画に取り入れ、独自のスタイルを確立。バスキアは政治や人種、社会的な問題を頻繁に扱い、アートを通じて社会の意識を高める作品を数多く描いた。作品にはアフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティが色濃く現れ、多様性を象徴するアーティストとしても注目された。27歳という短い生涯で多くの作品を残し、ホワイトカラーが主流だったアートの世界に一石を投じ、多くの点においてその先の美術の歴史に大きな影響を与えた。

【代表作】

バスキアが絵に描いた三つのシンボルの意味

まとめ

知っておきたいアメリカを代表する39人の芸術家のご紹介は以上となります。
この一覧から一眼でわかるように、特に1945年の戦後以降、アメリカの芸術家たちが世界のアートシーンに与えた影響は計り知れません。そして今なお新しく豊かな才能がこのアメリカから羽ばたき世界を驚かせています。
本記事では39名に絞りアメリカが誇る芸術家たちをご紹介させていただきましたが、正直アメリカは国の代表格と言えるような人物が多すぎたため、残念ながらご紹介できていない素晴らしい芸術家がまだまだいます。今回も30人くらいに収めたかったのですが、どうしても30の中に収めることができず、39名のご紹介となってしまいました。
本記事でアメリカの芸術に関心を持った方は「アメリカ 芸術家」と検索すれば膨大な数の刺激的な芸術に出会えますので是非とも調べることをお勧めいたします。

なお、本記事で取り上げた人物たちはあくまで編集者の独断と偏見で選ばせていただいたものとなっております。「後世に影響を与えた国を代表するような人物」という視点からピックアップしていますが、正確性を保証するものではありませんのでご了承ください。また本記事に掲載している画像は全てWikiart(https://www.wikiart.org/)からの引用となっております。

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